こたつむり

ワイルド・スピード SKY MISSIONのこたつむりのレビュー・感想・評価

3.4
★ 空を飛ばないクルマはただのクルマさ。

「思えば遠くに来たもんだ」
と言いたくなるほどに続いたシリーズ第7作目。主人公《ブライアン》を演じたポール・ウォーカーの遺作でもあります。

だから、かなり胸が詰まりましたよ。
本作で《ブライアン》の活躍を観るのは最後。第1作目では薄味だった彼も、歴史を積み重ねて掛け替えのない存在になりましたからね(一応、主人公)。

そして、物語終盤の演出は…もうね。あれは反則ですよ。正直なところ“あれ”はスタッフロールの後に仕込むべき展開。製作者の気持ちは痛いほど解りますが…本編の影が薄くなりますからね。けじめはつけたほうが良かったと思います。

さて、そんな本編ですが。
監督交代が良い方向に作用していたと思います。元々はB級だった本シリーズを盛り上げてきたのはジャスティン・リン監督。でも、前作で“行き詰まり”を感じましたからね。あの流れで作り込んでも、味がしないジャガイモ料理になっていた可能性は大。

ただ、ぶっちゃけた話。
本作からも“無理矢理に延命している連載マンガ”という雰囲気が漂っていたのも事実。今回の敵はジェイソン・ステイサム演じる《ショウ(兄)》。シリーズ中最強なんて雰囲気はありますが…。

何だか、宇宙の帝王を倒した後に現れた人造人間のような、一族と因縁を持つ敵を倒した後に一地方の殺人鬼と対面するような、宿敵(とも)を倒した後に修羅の国に行ったような…そんな蛇足感を抱いてしまったのです。

いや、端々の展開は良いのですよ。
特に冒頭からして《ショウ(兄)》の強さをアピールする演出は見事ですし、初期を彷彿させる“アタマがゆるい場面”も差し込まれますし、十字架にまつわるエピソードも歴史の重みを感じました。

でも、これは長く続くシリーズの宿命。
シリーズ開始時に構想があったならばいざ知らず、後付けならば抱いてしまう違和感なのです。アメリカの連続ドラマではよくある話ですね。

まあ、そんなわけで。
関係各位は続ける気満々でも(ドル箱だから仕方がないのでしょう)そろそろお腹いっぱいになってきたシリーズ。しかも、次回作は《ブライアン》不在ですからね…。本作を完結編にすべきだった…なんて展開だけは勘弁ですな。

To be continued… →→→ 
  『ワイルドスピードICEBREAK』
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