カツマ

スノーデンのカツマのレビュー・感想・評価

スノーデン(2016年製作の映画)
3.8
この物語は決してスリリングなフィクションではない。これはSNS社会の裏側にある監視社会の存在に警鐘を鳴らした嘘のようなリアル。一人の男が政府に挑んだ戦いの記録を、消滅させることのできない『映画』という媒体でもって世に問うた勇気ある者たちによる真実のバトンであった。男の名は今を生きる偉人ことエドワード・スノーデン。彼の肉声から放たれるメッセージこそが、この映画が作られた本当の意義だったろう。

アカデミー賞複数回受賞の映画界の巨人オリバー・ストーン監督が、スノーデン本人への直撃取材を敢行する熱の入りようで、彼の熱がそのまま映画全体の熱量へと変換されているように感じる作品だ。主演のジョセフ・ゴードン・レヴィットとのコンビもピタリとハマり、スノーデンの人生に起こった事件の数々を装飾を落とした生の描写で描き出してみせる。政府の必要悪が善か悪か、裁かれる機会を与えた彼の功績はあまりに大きい。彼がいなければ何も知らないままで、監視社会に身を投じることになっていただろうから。

〜あらすじ〜

待っていた男はルービックキューブを持っていた。彼はNSAの内部告発者、エドワード・スノーデンその人だ。そして香港のとある一室で彼は語り始めた、その衝撃とも言える真実を世に伝えるために。
2004年当時、スノーデンはアメリカ軍に入隊し、訓練の日々を送っていた。しかし、両足を骨折するという重傷により除隊を余儀なくされ、彼は人生の転換点を迎える。その後、国家安全保障局(NSA)に雇われると、メキメキと頭角を現し、コンピュータセキュリティの分野で天才的な才能を見せ始める。NSAからCIAへと仕事の場を移した彼だが、その過程で一般人のPCなどSNSの媒体から、彼らの生活を覗き見ることができる恐るべき実態を知ってしまう。次第にストレスに押しつぶされそうになるスノーデンだが、恋人のリンゼイの支えもあって、彼の人生は日本、そしてアメリカへと舞台を移していき・・。

〜見どころと感想〜

劇中でも示されているが、スノーデンという人は志願して軍に入ったり、政治にも強い主張があったりと、愛国心の強い人間だったようである。だが、自由の国アメリカの裏側を知った彼が、国に失望し、ついには故郷から離れざるを得なくなったのは悲しすぎる道程でもあった。それでも彼に、後悔している、というワードは似合わない。彼は自分の中の正義を貫いた普通の人であり、異常な世界にあっての正常な神経の持ち主だったのではないだろうか。

彼女のリンゼイとのエピソードが数多く登場してくるが、彼女の存在は非常に重要。スノーデンが決して独りで戦っていたわけではないのは、リンゼイという聡明な恋人がいたからに他ならない。

劇中で高官による、第三次世界大戦が起きていないのは我々の功績だ、というセリフがあるけれど、あながち否定もできないのが怖いところ。街中に監視カメラが数多く設置され、誰もがスマホを持つ時代。監視社会は避けられないような気もするし、プライバシーの尊重と治安の維持、という二本線が同時に並び立つ未来であってほしいと思った。

〜あとがき〜

主演のジョセフですが、スノーデンに雰囲気寄せてきてます。顔は似てないのに、最後本人が登場してきたときに、『結構似てるかも』と思えたので、やはりジョセフは普通人の雰囲気を出すのが上手いのかなと思いました。

とりあえず、この映画を観るとパソコンのカメラにガムテープ貼りたくなりますよね。見られて困るものがないとしても、見られてるかもしれない、と思うだけで嫌な気持ちになるものだから。
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