よしや

ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたちのよしやのレビュー・感想・評価

3.7
ティム・バートンらしい疎外感とメルヘンさの強い前半とアクション感の強い後半が合わさってエンターテイメント的にバランスが取れていて楽しめた。

疎外感の強い子供の主人公がおじいちゃんに聞いたおとぎ話を信じて(他の大人は否定する)その世界に飛び込んで行くストーリーは「チャーリーとチョコレート工場」でも観たな、と。「ビッグフィッシュ」的って言った方が分かりやすいかな。

監督ティム・バートン自身の周りから理解が少なく孤独感を感じた子供時代とその逃避先としての異世界、が反映されている作品は多い。

ティム・バートンの特徴であるアラン・ポー的なオカルト怪奇趣味(これは舞台造形に反映されていることが多い)も特に前半に遺憾無く発揮されていて、メルヘンよりもホラーに近い世界観が展開されていた。

最近のバートン作品常連のジョニーデップを使わず「アリスインワーダーランド」のように強烈な大スターが作品の世界観を破壊することがないのは良かった。

ストーリーも「アリスインワーダーランド」や「チャーリーとチョコレート工場」など子供向け作品に比べると大人を意識した複雑さがあり、それとは別にコミカルでリズムの良く誰でもクスっと笑える所も多く、年代層は広く楽しめるようになっていた。

言及してきたように他人とは違う主人公の疎外感と心の痛みというテーマはバートン作品に多く、彼の作品の主人公は思い悩むのだけれど、今回は人とはその違うことがスペシャルで素晴らしいじゃないか!という方向に持っていくことで作品のトーンがポジティブになって大変観やすかった。

ただループに関する時系列がゴチャゴチャしていて分かりにくく、登場人物の性格は単純すぎて型通りの動きが多い、ミスペレグリンに会うまでが前置きとしては長すぎるなど微妙な点もあった。

さらに1番問題なのは悪役。とにかく魅力に欠け、弱い。

これだけ多様な能力が使える子供がいるならもっと容易に倒せて良いはずだし、目に見えないだけで単純な物理攻撃にも弱い相手に特殊能力を持つ子供たちが虐殺されるのは無理があった。

悪役の親玉も無駄に話しているだけで強さを感じず、ティム・バートンのこうした悪役造形が雑で甘く、緊張感のない所はやっぱり好きじゃないなと感じた、視点が優しすぎる。

直接的には描かれてはいないのだけど、年代やポーランドに言及されている箇所もあり、ナチスによるユダヤ人迫害と第二次世界大戦の暗い影(イギリスは空爆を受ける)を感じさせる。
ペレグリンと子供たちの迫害がユダヤ人迫害と重ねるあたり、ただのお遊び映画ではない深みを感じさせた。
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