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本能寺ホテルのKEYのレビュー・感想・評価

本能寺ホテル(2017年製作の映画)
3.4
時代劇が観たくなり、Netflixで配信されていたもので好みのキャスティングだったので観賞。

一言に時代劇と言っても、今作は彼氏の両親に会いに京都へ行った際、泊まったホテルで偶然に偶然が重なり、天正10年(1582年)にタイムスリップしてしまうというファンタジー映画である。
『DESTINY 鎌倉ものがたり』や『39 刑法第三十九条』で、個人的に今最もアツい俳優堤真一が信長役、主人公を綾瀬はるかが演じる。堤真一の演じる織田信長役は、武将独特の緊張感と親しみやすさを合わせ持つ信長の人間性を上手く表現してくれていた。

彼氏の両親に会いに来た主人公を演じる綾瀬はるかは、彼女の十八番の純粋で真っ直ぐな演技を今作でも見せてくれる。
彼氏の両親に会いに来た彼女は、何も知らされず彼の父親の営む料理屋へ案内される。話を聞くと、何でも結婚式の日程まで既に話が通っているらしい。しかし否定せず、「彼がそう言うなら…」と主人公は受け入れる。
また別のシーンでは、そんな彼女を見て彼氏の友人が「控えめで良い子だな〜」と呟く。
実は彼からプロポーズされたのは、働いていた会社が倒産し、休職中だった時期である。持っていた資格は、保険で取っていた教員免許だけ。婚約を受け入れたのも、結婚式の日程も全て周りの意見に合わせただけなのだ。
今作はそんな主張が弱い彼女が、信長と出会い、自分の人生の目的と意思を持とうとする物語なのである。

時代の流れに取り残された少女と言えば『この世界の片隅に』の浦野すず(CV:のん)が記憶に新しいが、比べると今作では明らかにフェミニズム的な側面があることがわかる。
織田信長が時代を超え、意思の強い理想像として描かれ続ける一方で、「控えめでおしとやかな女性」など古い価値観になるものもある。
冒頭にあった「愚者は経験で学び、賢者は歴史から学ぶ」と言う言葉通り、私たちは自ら経験しなくても、歴史や物語を通して学ぶことができるのだ。
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