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セクシュアル・イノセンスの4423のレビュー・感想・評価

セクシュアル・イノセンス(1998年製作の映画)
4.5
マイク・フィギスの作品といえば真っ先に思い浮かぶのが『リービング・ラスベガス』。「ああ、仕事をクビになったアル中男を娼婦の女が介抱するだけの話ね」なんて思っている私が通りますよ。

本作はマイク・フィギスの性的体験を元に映像化した自伝作品で、構想になんと17年もかかったらしい。

内容はフィギスの分身ともいえる主人公ニックの過去と現在を絡めたエピソードが断片的に語られていくというもの。さらにその合間にはアダムとイブの創造~無垢の喪失→失楽園という意味合いを含めた(と思われる)神話的な映像も挟まれる。

正直なところ終始意味不明だし、これを完全に理解できる人は一人しかいないだろう。そうフィギス本人だ。他人の性的体験など難解そのものだし、どうでもいいのだが、観て損をした、時間を返せなどとは1ミリも思わないんだよな。この作品嫌いじゃない。さしずめこれはフィギスの人生の一部にして映像記録、アイデンティティーそのものなのだろう。

そして何より音楽が素晴らしい。トロイメライ、夜想曲、月光、悲愴といった名曲の数々がしっとりと流れては消えていく。映画監督だけでなく、ミュージシャンとしての顔を持つフィギスならではの味と色がよく表れた部分だと思う。

ニックがキッチンで野菜を切る妻の胸をまさぐり、乳首を摘まむ→服を着たままセックスの流れが詩的で最高すぎた。美しいけれど氷のような冷たさを放つジョアンナ・トレルの魅力が爆発している。
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