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エクス・マキナの福福吉吉のレビュー・感想・評価

エクス・マキナ(2015年製作の映画)
4.0
◆あらすじ◆
ケイレブは検索エンジンで有名なIT企業のプログラマーとして勤めており、ある日、社内抽選で社長のネイサンの自宅で過ごす権利を手に入れる。ケイレブは人っ子一人いない山間の社長宅を訪れ、初めてネイサンと対面する。そこでケイレブはネイサンから極秘で開発している人工知能「エヴァ」のテストを行うように依頼される。

◆感想◆
限りなく人間に近い知能を持つ人工知能とそれのテストに依頼された主人公の間で繰り広げられるやりとりの中で主人公が人工知能に魅了されていくとともに人工知能の本当の狙いが明らかになっていくストーリーとなっており、最初は明らかにロボットとして意識していた人工知能がストーリーが進むにつれてその人間らしさに共感を覚えていく主人公の変化と何を考えているのか分からない人工知能の得体の知れなさが面白い作品となっていました。

主人公のケイレブ(ドーナル・グリーソン)は優秀なプログラマーで、勤めるIT企業の社長宅に行く権利を抽選で得て、人里離れた社長宅に訪れます。ケイレブは次第に自分が何のために社長宅に招かれたか分かるようになり、そこから彼が社長に対する不信感と人工知能への感情移入が高まっていく様子が描かれており、彼の心情の変化にしっかりと伝わってきて、彼が最終的にどうなるのか興味を持ちました。

社長のネイサン(オスカー・アイザック)は天才的な能力でIT企業を成功させた敏腕を持つ一方、誰も信用せず、全てを極秘裏に進める用心深さと自分の思い通りになることを当然と思う傲慢さがあって、かなり癖の強い人物だと感じました。人工知能を開発するプログラマーとしての優秀さはケイレブ以上と言え、超人的な人物なのですが、どこか信用できない怖さをあって、最後まで油断ならない人物でした。

そして、本作のメインキャラクターである人工知能の「エヴァ」(アリシア・ヴィキャンデル)は身体はロボットであることが明らかなのですが、その表情や会話の仕草が人間と変わらないものとなっており、テストの相手であるケイレブに強い関心を持っているように感じました。エヴァはストーリーが進んでいくとともにその人間らしさがクッキリとしてきて、観ている私も次第にエヴァを人間と同じように感じていたと思います。

ネイサンとエヴァのそれぞれの思惑が少しずつ明らかになっていくとともにケイレブがエヴァに惹かれていく展開が終盤まで続いていくのですが、ストーリー構成として観ている側がネイサンとエヴァのどちらを信じて良いか分からないケイレブの心情に重なるようになっていて、見事なストーリーだと思いました。ネイサンの胡散臭さは最初から明らかなのですが、エヴァは必死にケイレブを味方に引き入れようとしていることが分かったので、それを信用してよいのか最後まで分からず、本作を目いっぱい楽しめました。

人工知能の発達と人間らしさの併存がこれから先にどうなるのか不安感を抱かせる作品となっていて、とても面白い作品でした。様々な映画で人工知能が人間を排除しようとする未来を描いたものを観ていましたが、本作はその一歩手前の部分を巧妙に描いていたと思います。

鑑賞日:2025年3月13日
鑑賞方法:Amazon Prime Video
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