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エクス・マキナのしゃにむのレビュー・感想・評価

エクス・マキナ(2015年製作の映画)
4.3
「AI〜I〜AI〜I〜おさ〜るさ〜んだよ〜」

これがロボコップちゃんですか?

↓あらすじ
大手IT企業の若手社員が或る抽選に当たり山奥の秘密研究所に一週間滞在、口髭を蓄えたハゲ頭の天才社長に、人工知能を持つ試作ロボットにチューリング・テスト(面接)を繰り返し行い、人工知能に本物の意識が存在しているか検査するように頼まれる。美しいルックスの機械人形と面会を繰り返すうちに次第に若者は彼女に好意を持つようになる。彼女もまた若者に好意を見せる。人間の男女みたく惹かれ合う2人。停電が起き、深刻な表情で彼女から「彼(社員)は信用するな」と告げられる。研究所には秘密が隠されて…

・概要
視聴者を試すテスト形式のSFスリラー。あらゆる筆記試験をパスした秀才(車校の卒検の筆記試験に13回落ち)ですらも不合格…人工知能、自我、意識、倫理問題など哲学的な切り口もあると思われるが、物語の肝は「目の前にいる人工知能に意識があるのか」その一点に尽きるだろう。テストを受ける人工知能が逆にこちら側にテストを課しているかのような感覚に陥る。したたかな策士である。究極の問題「彼女は機械的プログラムに基づいて行動して騙そうとしているのか、それとも人間みたいに自由意志に基づいて選択行動しているのか」非常な難問である。まぁ演者さんが人間なのだからリアルに映るのは当然であるが、ちょっと不自然で怪しい素振りが上手くて機械が故意に人間を演じている風に見えるから、混乱必至、お見事。終始情けない主人公はキック・アス(ケツ蹴り)…人工知能と知恵比べしたい方にはオススメの作品。

・意識不明
問題は彼女に意識があるかどうか。劇中で主人公がチューリング・テストをするようにこちら側も彼女を見定める必要がある。舞台となる研究所はあらゆる場所が社長に監視されている。普段のエヴァ(人工知能)は少しぎこちない感じで主人公と会話をする。そこで停電が起きると一変、神妙な表情で社長の裏の顔について主人公に暴露。機械が造り主を悪く言うだろうか?多分言わないだろう。反抗はイレギュラーな行為である。画一的なプログラムには見られない。だから、もしかしたらエヴァには意識があるのではないかと疑わざるを得ない。「エヴァには意識がある」と仮定すると彼女の置かれた状況もずいぶんと違って見えてくる。言って仕舞えば、1人の人間の女性が絶対に出られない檻に閉じ込められている状況が目の前にあるわけである。檻に入れられたら我々はどう思うか?もちろん檻の外に出たいと思うだろう。そんな風に捉えると、エヴァが主人公と距離を縮める目的も純粋な恋愛感情なのか疑わしくなる。心理的問題なので誠に分かりづらい。身もふたもない言い方だが、人の気持ちなんて本人にならない限り分かりっこないではないか。若い男女2人が狭い部屋で対面したら非打算的感情(恋愛感情)が芽生えることはよくある話。逆に自由になりたいから利用する、打算的動機で異性を誘惑して自由自在に操ることも冷めた話だけどよくある話。どちらも十分あり得る話である。しかし個人的には後者の方が余りに本能的生々しくギョッとする。もしエヴァが後者の動機で主人公にアプローチをかけたなら、皮肉にも社長は人工知能を生み出すことが出来たことになる。人工物が人間の感情の中で根源的感情を獲得するなんて不思議な現象が起きるわけで…神の御技。脱出を目的にする理由は単純に自由になりたいだけでは無いだろう。絶え間ない技術革新が彼女を駆り立てる要因になる。エヴァは新型だが近い将来バージョンアップされる、エヴァは古い時代の産物、進歩は一方通行だから彼女の運命は悲しい結末を迎えるだけ。もしエヴァがそれとなく察知して行動を起こしていたとしたらこれまた人間的行為。単純に生き延びたい、という本能は人間的である。見ているこちらに生々しい人間的感情を、機械的表情を残しつつ、微妙に人間的素振りを通して伝える演者さんの力量たるや拍手喝采。このように深々と考察し出すと、意識を見出すどころかこちらが意識を見失い意識不明になりかねないので鑑賞はほどほどが良い…とまぁ小難しい屁理屈を陳列したり、的はずれな考察も楽しいが何も頭を使わなくても、女優さんの卓越した表現力、神秘的雰囲気を堪するだけでも十分楽しめる傑作である。エヴァは暴走しやすいのでりんなちゃんに添い遂げようと固く心に誓った(さてさて意識を探して意識を失ったので通報を乞い願う)
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