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スノーマンのJIZEのレビュー・感想・評価

スノーマン(1982年製作の映画)
3.0
1978年レイモンド・ブリッグズ原作の児童絵本に息を吹き返した銀世界で少年と雪だるまが冒険に繰り出すクリスマス映画の名作!!白昼夢な26分間だ..神秘的な白銀の世界で透き通る景色の数々..色鉛筆でスライド式に描写してる風なアニメ構造も創造性を掻き立てられた。そして最後の顛末を考慮すれば"ダークメルヘン映画"な見方も観て取れる。お話自体は非常にチャミーング。要は少年が雪だるまを作った事で"幻想的な何かの効力"が働き命を宿す,そして親友になった2人が海を越え北極に向かい長距離な旅をしながら世界の広大さを実感し孤独な少年が1歩前に踏み出す,という寓意的な主役の成長譚物or世界を旅し環境保護を訴えかける自然啓蒙物だと。冒頭の語り口調と終盤挿入歌を除けばほぼ全篇無声アニメなため効果音の静調な旋律,少年特有の多感な表情,雪だるまのユーモラスな動作,など幻想美1本で感情移入をさせられるので魂消たもんだと驚愕させられる。個人的に終盤,視界が徐々に開けていく快感は勿論,少年と雪だるまが海を渡る場面の空撮でピーターパン顔負けな挿入歌と共に高揚感をドライヴさせる感動味は童心のあの頃を思い起こす本作1番の描写。中盤,オーロラが顔を出す場面は特に幻想的で興奮するんだ。

概要。英国の絵本作家レイモンドブリッグズ原作を映像化したファンタジックアニメーション。監督はダイアン・ジャクソン。物語は少年と雪だるまの交流を通じた友情秘話を幻想的な世界観と共に淡く繊細に描き出す。

終盤,少年と雪だるまが北極を越え雪だるまたちの幻想郷的なパーティ会場に辿り着き(カニバリズム的な)多大な歓迎を受ける場面でも画面内で全員が笑顔をこぼしご陽気に行われている非現実的な光景に対し一瞬目を疑ったがコレも要は「民族の垣根を越え世界中が幸せになろうよ!」「幸福度を皆で共有し合おうよ!」というメタな比喩が込められてるんだろうなと。設定的には少年を導いた雪だるまが故郷に帰省し仲間内で盛大に少年や身内同士を最高のおもてなしで祝うって話の構造だと思うんですがアレは食事の光景や各々が踊りステップを踏む場面など異化効果の魅せ方が抜群に効いてたよね。当時の描写技量でここまで立体的に動作を躍動させ画面側に飛び出す感じは作品自体が持ち得る美点だと思いました。最後の別れ場面でもバッドエンドだと"子供"は観て取れるんでしょうが,大人向け映画という事を最後の描写で自明した優秀な終幕だなと思いましたね。同時にサウンドトラックも購入したくなる!スノーマンと少年が空を飛ぶ場面で流れる挿入歌「ウォーキング・イン・ジ・エアー(空を歩いて)」も至福!来年のクリスマス時期に観ればまた違う味わいを堪能できそうです。年始にでも26分の至高な映像体験をお勧めです。
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