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アバウト・レイ 16歳の決断のKohtaroのレビュー・感想・評価

アバウト・レイ 16歳の決断(2015年製作の映画)
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試写会で見ました。すごく楽しめたのでおすすめな映画です。

この映画、邦題はアバウトレイ(レイについて)なんですけど原題は 3 generations(3世代)なんですよね。つまり何が言いたいかというと邦題ではエルファニングが演じるレイに焦点を当てた映画になるけれど、本当はレイの母親と祖母も主人公であるということです。

レイはトランスジェンダー。男になりたい、本当の自分を表現したいの一心で動きます。それに比べて母親はもっと複雑な感情で。愛する娘の意見を尊重しつつも抵抗はあるし、映画の後半ではさらに多くの人間関係で悩んでいく。役に入りこんでトランスジェンダーにしか見えなくなるエルファニングの演技も本当に素晴らしいですが、この映画のMVPは人間臭さに溢れた役を演じきったナオミワッツな気がしました。

この映画の脚本はマクロ視点で見ても中だるみが少なく素晴らしいのですが、特に素晴らしいのはマクロ視点での細々とした部分です。ちょっとした出来事で男扱いされて喜ぶレイだとか、親子喧嘩の前後の台詞群が映画を見る観客に共感を与えたりだとか。繊細な題材を扱っている映画ですが、その描写が陳腐に見えたシーンはありませんでした。シリアスになりすぎないようところどころに挟まれたお婆さんのコメディシーンも面白かったです。

僕がこの映画で息を飲んだのは小道具の使い方です。ローラーボード、靴、ヘッドホン、家の背景に置かれた物などなど隠喩が多いとも感じました。

映像面でもカメラワークがすごく凝っていたり、登場人物たちの服装が結構変わったりと、観客側が飽きない工夫がたくさんされています。自分はカメラワークが奇抜な映画が好きなことも多く、自分の感性にピタリとこの作品がはまりました。サントラも好きでしたし。

単なるヒューマンドラマに見せつつ、アメリカのトランスジェンダーに関する法律への問題提起もある社会派的な内容もあります。もちろん1番のウエイトはヒューマンドラマに置かれていますが。

見た人によって母に共感するか、子に共感するかが分かれるのでいろんな人の感想を見てみたいです。

ところどころ出てくる黄色が印象的な映画。性についての映画のようで家族についての映画。
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