ごんてぃー

劇場版 MOZUのごんてぃーのレビュー・感想・評価

劇場版 MOZU(2015年製作の映画)
3.9
   やりたいことをやりたいなりにやりきった佳作なシリーズ、の劇場版です。TVドラマシーズン1,2はもちろん鑑賞済みで臨みました。

   なぜに酷評なのでしょう…?それも「TV版は良かったのにこっちは酷い」みたいなレビューが散見されたのでますます意外でした。「なんだいつも通りのMOZUやんけ」となったのは私だけではないはずです。TVシリーズの陰鬱とした雰囲気はそのままに、見事一本の劇場作品として仕上げられていると思います。古今東西問わずTVシリーズを劇場版に変換するのって滅茶苦茶に難しいですからね。SWATとかチャーリーズエンジェルとか24とか。TVシリーズはなかなかに練られた脚本と抑え目ながらソリッドなアクションでテンポよく紡いでいましたが、この劇場版はかなり「攻めて」います。
   
   まずキャラクター陣。主人公の倉木は別にTVシリーズの頃からこんなもんの演技で西島秀俊は演じてたと思いますし、香川照之は相変わらず役名:香川照之だし。チャオおじさん東は大活躍です良かったね。池松壮亮演じる百舌もいいキャラ立ちしてます憎いですね。TVシリーズから第二の主人公ポジでしたが今回も生き生きしています。「女装する双子の殺し屋」という唯一無二のキャラクターを生み出した挑戦的なこのシリーズだからこそ劇場版でもその手の場面が見たかった。最後に隠し玉、世界の北野武。所々穴のある脚本を逆手に取ってみんな勢いで演じ切っているのがたまらない。エンタメなんだからこのくらい荒削りでもいいのです。雑なのはアカン。

    次に海外というよりフィリピンロケをふんだんに利用したソリッドかつ派手めなアクション。この辺はTVシリーズとの対比ができていてとてもいい。かなり質のいいスタッフが参加しているのでしょう。中盤のカーチェイスが本作の目玉ですが、非常に完成度高いです。カメラワークもスタントも申し分ない。長谷川博己の怪演も相まって、最早ギャク漫画の様相を呈していましたが。カーアクション自体がレベル高いので失笑にならないのがまた憎い。

    なんだかんだ賛否両論あるみたいですが、TVシーズン1,2そして劇場版とそれなりに上手く物語として着地できていて良いと思います。
2010年代の邦画界の中ではトップクラスに面白いかつ楽しめるシリーズです。果たして今撮ってる(らしい)日本版24 -TWENTY FOUR-はこれを超えられるか…?
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