ちろる

ベル ある伯爵令嬢の恋のちろるのレビュー・感想・評価

ベル ある伯爵令嬢の恋(2013年製作の映画)
4.0
実在した伯爵令嬢ダイド エリザベス ベルの数奇な運命と愛のお話。
父の多大なる財産を相続しながらも、黒人奴隷の母の婚外子だったために影の存在として育てられ、生涯結婚は望めないと言われていたベルが恋に落ちるロマンチックなラブストーリーがメインなの思っていたら、中盤からは判事であった育ての義父が扱っていたゾング号事件の裁判も関わりはじめ、ベルの存在がその後の奴隷解放にも繋がっていくという、なかなか興味深いストーリー展開なっている。

君の苦悩は(黒人だった)母親のせいだ、君に美しさをくれた父親に感謝したいと言って彼女を口説く名家のアッシュフォードと、きっと君のお母さんはとても美しかったに違いないと言う貧しい牧師の息子ジョン。

階級社会のしがらみで周りから結婚が決まるような当時のイギリスの厄介な仕組みも織り交ぜながら、同じように育ち、美人で気立ても良い従姉妹のエリザベスが持参金が無いせいで、名家なのになかなかお相手探しに苦労するサイドストーリーもなんだか切ない。

人間関係もダイドとジョンのラブストーリーだけではなく、従姉妹エリザベスとの友情、義両親のダイドに抱く想い、黒人メイドとの絆など、ダイドに注がれてきた愛がとても深く、心地よく描かれていたのが嬉しい。

白人だけの貴族社会の中で育ったがため、ずっと母親の肌の色を恥じて、母が黒人である事を罪だと信じていたダイドが、自分の黒に自信を持つようになれたのは、彼女の全てを愛するジョンの存在だけはなくこんな温かい家族の愛の支えがあったからだろう。
出来ればダイドの両親の身分違いの恋についても是非知りたい。

自分に流れる血のままに、自分の立場にこそできる行動を貫き、そんな彼女をちゃんと認めてくれる心優しいき勇気あるイケメン男性がいる。なんて幸せな女性。

この素敵なラブストーリーは恐らくフィクションだと思われるが、現在もイギリスに続くマンスフィールド家の所有する18世紀の令嬢エリザベスの隣に描かれたベルの肖像画は2005年にようやく公開されたそうで、このドレスを着る褐色の美しい黒人女性は誰だ?と大変話題になったと言われている。
当時の肖像画に描かれる黒人といえば、白人にかしづく奴隷の姿だけ、白人のエリザベスと同等に絵の中心に目を輝かせるエキゾチックな美女の姿にきっと皆様々な想像を巡らせただろう。
当時黒人を白人と同等にする事なんてありえないわけで、彼女の存在は文献には残されず、絵を公開する21世紀までずっと彼女の真実は隠されていたという。

当時判事であったマンスフィールド卿が何故、黒人奴隷解放のきっかけになる判決を下していたのかといった過去の謎も、この絵が見つかりダイドの存在が紐解かれた時ににようやく点と線がつながったということだ。
歴史はやっぱり不思議な縁が愛で紡がれているようで神秘的だ。

しかしハリポタのマルフォイ役でお馴染みのトム フェルトンは相変わらずムカつく役柄が本当に板についている。
殆どの登場人物が善き人だっただけに、かなりいいスパイスになってくれていたので、彼の意地悪顔って貴重だな。
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