「ぼく!エッチな映画が観たい気分!」と目を輝かせて上野オークラ劇場に入ったことを思い出します。
思い出します、と啖呵を切っておいて誠に恐縮ですが、映画の内容自体はあんまり思い出せません。
昔の作品で、床屋のお姉さんになんか過剰サービスしてもらえるかもしれないし、してもらえないかもしれない、みたいな映画でした。3本立てでしたが、残りの2本は本当に覚えていません。
大雑把な感想としては、なんか情感があるや!という感じでした。
イタリア式本読みをベースとした現代桃色映像にも、床屋シチュエーションの作品はありますが、こちらはもう絶対するじゃん!という感じでスタートするので情感はゼロです。
対して、映画の方は予感から行為に転じるまでのレンジでだいぶ遊んでいる感じはありました。
まあ結局するんですけどね。
そんなことよりも、場内のおじさま達の視線が気になりました。「若造が、こんな場所にイキッてやってくるもんじゃねえ、若造が」みたいなメンチを切られているのかと思い、ぼくも負けじと全盛期の見立真一みたいにメンチを返しました。「ぼくじゃなくて、映画を観ろよ!」と漫画の見開きに採用されそうな感じで叫びたくなりました。たまに長いウィッグを被ったおじさまもいました。
そんな不思議な体験をしたことが気がりで、家に帰ってから、上野オークラ劇場について調べてみました。
「やれやれ!」と僕は言った。
僕のろくでもない人生の中で、これくらい長い時間スマフォを見つめたことはなかったね。嘘じゃなくってさ。
僕の話はこれでおしまい。このドキュメンタリーを観て、ピンク映画をまた劇場で観たいとか、そういう風に考えることもできる。でもどうも気が乗らないんだな。ほんとの話。知りすぎてしまった今、あの場所にまた足を運ぶ気持ちになれないんだ。
でもあのとき、僕の席に誰も寄りつかなかったのは、どうしてだろう。そのへんは分からないな。僕の見た目がアウトオブ眼中だった、というだけのことかもしれない。それとも、本当に僕の目が輝いていたのかもしれない。もし子どもたちが映画を観たいと思うのなら、好きにさせておかなくちゃならないから。いやまったく、君にも一目見せたかったよ。