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神々のたそがれの一のレビュー・感想・評価

神々のたそがれ(2013年製作の映画)
4.5
ロシアの巨匠 アレクセイ・ゲルマン監督の遺作

ストルガツキー兄弟のベストセラーSF小説を約15年の月日を費やして映画化した作品
地球より800年近く遅れて発展する惑星を舞台に、そこに降り立った学者たちが目撃する暴政と虐殺の連鎖を映し出す

すんげぇなこれ…
むせ返るような臭気が漂う地獄のような光景を鬼気迫る描写で捉え続けるという、自分が求めていたもの全てが詰まってる理想的な狂気じみたぶっ飛びイかれ映画でもう最高

ブルーレイを購入するか迷い続け、ようやくレンタルで観ることが出来たアレクセイ・ゲルマン作品でしたが、レンタルじゃなくて最初からブルーレイ買っとけば良かったと激しく後悔

予告で哲学者のウンベルト・エーコの言葉「アレクセイ・ゲルマンに比べれば、タランティーノはただのディズニー映画だ」なんて煽っちゃってたり、タルコフスキー、アンゲロプロス、タル・ベーラという錚々たる巨匠たちの名前を使うとは、どれだけのものを魅せてくれる映画なのかとハードル爆上がり状態で鑑賞した訳ですが、本作はそんな煽りや名だたる巨匠の名を使っても許されるレベルの飛び抜けた怪作であり大傑作といっていい

イかれたSF具合はズラウスキーの『シルバーグローブ』が一番近い気がするけど、地獄巡りの『異端の鳥』を究極に泥臭くし、『サタンタンゴ』や『ニーチェの馬』風味すらある

モノクロかつ3時間弱もある大作で、特に動きのあるストーリーでもなければ、“神”という存在を独自の解釈で描きつつも小難しい感じもないので、有無を言わさずめっちゃくちゃに惹き込まれる作り込まれた独特すぎる圧巻の世界観は鳥肌もの

新手のカオス、いやカルト
なにもかもが陰鬱で絶望的
文字通り地獄のような映像から醸し出す雰囲気全てがグロテスク
画面越しでも臭いが伝わってくるほどの、ヘドロのような汚物まみれの身の毛もよだつ構図のオンパレードで、もはやこの映画には字幕なんか不要なんじゃないかと思えるくらいの、凄まじく破壊力のある強烈な映像がひたすら続く

徹底した一人称視点や寄りの撮影や長回しの多用が有効的に作用し、馬を使いながらの汚物だらけの地獄絵図がより映える

めちゃくちゃ気持ち悪いんだけど、こういう映画は延々観ていられるから映画ってやっぱり凄いよなと変に感動すらしてしまった

確実に観る人は選ぶ作品だけど、観た者全てに強烈なインパクトを与えてくれるのは間違いないかと
とはいえ、くれぐれも悪趣味全開な映画であることを百も承知の上での鑑賞というのを頭の片隅に…😇笑

〈 Rotten Tomatoes 🍅95% 🍿66% 〉
〈 IMDb 6.7 / Metascore 90 / Letterboxd 3.8 〉

2021 自宅鑑賞 No.397 DMM
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