Stroszek

SHARINGのStroszekのネタバレレビュー・内容・結末

SHARING(2014年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

2014年。ショートバージョン(ロングバージョンはよりスリラー仕立てらしい)。

心理学、予知夢、ドッペルゲンガーをテーマに取りこんだ映画。

東日本大震災から3年。亡くなった恋人を忘れられずに幻覚を見る社会心理学者の瑛子と、卒業制作で震災をテーマにした演劇を上演しようとする薫という2人の女性を中心に展開する物語。

瑛子は発生前に震災を予知夢で見た人々の証言を集めている。

薫は演劇で「被災者でない人間が痛みを表現することは傲慢ではないか」という、表現者としての問題を抱えながら上演を目指している。

記憶と共有についての物語であり、「人は喜びや悲しみを分かち合うことはできるか」という主題がある。オカルティックな方法で薫が被災者と板の上で漂っていた瞬間を共有していたことが明らかになるラストはホラー映画っぽい演出である。上映後のトークショーにおける篠崎監督の説明によると、「あの電車で掌に蝶々の痣がある女の子の方が実は生きていて、薫が一人芝居で演じた母親の方が死んでいたことが明らかになる。電車で女の子を抱えていたのは死んだ母親の叔母か姉」らしい。つまり薫は、何らかの方法で死にゆく母親の体験を共有しており、それを一人芝居の形で観客に共有させたことになるのだ。

しかし「薫が死にゆく人の意識を追体験していた」ことになると、「実際に経験していない人間は、震災について創作する資格はないのではないか」という疑問をさらに強めることになるが、いいのだろうか。

対話場面で、顔の大写しと対話者たちの顔の切り返しが繰り返されるのだが、どういう意図があったのかは、まだ私には分からない。
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