雅治

THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦の雅治のレビュー・感想・評価

2.0
『機動警察パトレイバー2 the Movie』の続編(後日譚)という位置付けであると同時に、『パト2』の内容をほぼそのままトレースしたような、まさに『実写版パト2』と呼ぶべき映画である。期待していたものとは近いながらやはり違うので特に不満が大きくグチっぽいことばかり書いてしまうが、面白くなかったわけではない。

脚本が本当に雑。人物の心の動きが唐突で、感情の動きが理解できない。それならそれで、カメラ刻んで勢いで流せばいいのに、流せてない気がする。謎やギミックはほぼ流用だし、この映画ならではという部分に欠ける。いろいろ雑だ。

ずいぶん尺の長い銃撃戦+航空アクション+レイバーによる射撃と、押井守としてはサービス精神旺盛。(しかしレイバーの登場は遅く、他作品を見ていないと物語のタテツケの説明も足りない)

敵の灰原や柘植のシンパからテロを起こす動機が一切語られないので緊張感に乏しく、敵が柘植の劣化コピー的な存在ならこの映画の構造自体が劣化P2にならざる得ないことを端的に現してしまってる。

映画単品としては成立せず、しかもTHE NEXT GENERATION内でも完結しない。その上、アニメ作品と実写作品を同一時間帯上に置く都合上、それをつなぐ南雲元警部補が声の出演となっており、とてもカッコイイ声ではあるが、実写作品との違和感が大きい。

 それに代表されるように、アニメと実写の差をとくに丸め込もうとしないシナリオの為に違和感がアチコチで発生する。高島礼子の演技やカメラでの捕らえ方が完全にアニメのそれなためツライ感じになっている。セリフが実写で生身の人間が発声する用にこなれていない。もちろんこんなのはギャグだったり全編を通してそういうものですよという演出であれば気にもならないのだが、普通にサスペンス&ポリティカルフィクション&アクションとしてお話が動いているのでどうしても気になる。他短編ではコメディ調の特車2課の面々が違和感を和らげるわけだが、今回はそれも控えめだ。

 全体的にシナリオが雑で登場人物の心の動きに納得感が足りないし、各種組織の動きにリアリティがない。それを上手くごまかす小技も弱い。登場人物の心情の動きに納得感がない事をもうちょっと書くと。特車2課の面々が、命を賭けて出撃する事を納得するだけの積み重ねが足りなく感じる。これはパト2では無理があるなりに上手くやっていただけに気になった。パト2の後藤は強制も命令もしないといいつつ隊員の選択肢つぶしてあったし、ココで引けば後がない状況が構築されていた。自衛隊の出動自体が敵の目的なので特車2課でやるしかない。

 アニメなので都市部に自衛隊を繰り出せるし、戒厳令下の都市も描ける。そういう緊迫した画面と世界の切り取り方をして、登場人物が追い詰めた状態を用意。この状況下にこのキャラクターが置かれたら、まぁその選択肢に乗るだろう。そういう状況を組み立ててある。それに比べると実写版では、これ自衛隊と機動隊の仕事だよなー、肉弾戦で特車2課が出張る意味殆どないんじゃないの。という無理が祟っている。(リボルバーカノンが有る、ってだけ。)実写で表現し難いのは解るが。理屈をどう捏ねても、あそこで肉弾戦に行くだけの説得力が足りない。誰も死なないで済むだけの説得力も足りない。

とにかく前半が最悪です。アニメーションでは許される描写や適切な間の取り方でも、実写になると途端に安っぽくなったりすることがあるのだと。それを意識できずに映画を作ると、とても痛い事になるのだと。本作は、見事にその罠にひっかかっております。巨匠・押井守がそのことに気づくことが出来なかったのが残念でなりません。

本作の前半を恐ろしくつまらなくしているのは、会話シーンの恥ずかしさであります。P2の時には、後藤隊長と荒川の長々しい会話が妙に印象的で、深みがあるように思われ、聞き入ることが出来たのに…本作での後藤田隊長(筧利夫)と公安三課の高畑(高島礼子)の長ったらしい会話は背筋が凍るほどつまらないです。カッコ付けの難しいセリフが、完全に浮わついちゃっててカッコ付いていないのです。高島礼子演じる高畑が、突如「正義って何?」…なんて問い始めるのが寒くて寒くて。会話シーンが「実写向け」にリアル化されていないのだ…と思います。おまけに時間の関係か予算の都合なのか、単純なカット割りばかりで本当に安っぽい。アニメの方の劇場版では、非常に印象的で特徴的だった押井守の作家魂に溢れた演出など、一体全体どこへやら。

良い所もある。『THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦』では、イングラムだけでなく、敵の戦闘ヘリコプターまで実物大で作ってしまったのだから恐れ入る。今回、陸上自衛隊が極秘に開発していた次世代型戦闘ヘリAH-88J2改「グレイゴースト」が何者かに盗まれテロに使用される、というストーリーで、当然ヘリアクションもあるだろうとは思っていたのだが、まさかフルスケールの模型を作ってしまうとは!

おそらく日本映画では初の試みであり、海外でもほとんど前例がないだろう。なぜなら、例えば『ブルーサンダー』などの場合は既存のヘリ(SA341)を改造して架空のヘリを作り出していたのに対し、本作では全くのゼロベースから1機丸ごと作っているのだから!しかも、レーザーカットマシーンで部品を一つずつ切り出し、それを手作業で組み立てたというのだから凄すぎる!

こうした「実物大プロップ」を画面に配置することで、『THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦』は虚構のフィールドに見事な臨場感を生み出している。CGはたしかに便利で予算の節約には役立つが、「現物がそこにある」という説得力までは生み出せない。さらにグレイゴーストと戦う自衛隊のヘリ(AH-1コブラ)は、陸上自衛隊の全面協力によって本物のヘリを登場させているのだ。架空のドラマにリアリティを付加するには、実物大や本物を使うのがやはり一番ということなのだろう。

ガンアクションや格闘はまぁそんなもんだろう、というレベルだが、国産でまぁそんなもんだろうレベルのアクションが見れるなんてめったにない。航空アクションは、おそらく国産ではベストで、これを超える作品は知らない。ステルス戦闘ヘリのゴーストハウンドとF16、コブラあたりの絡みは非常にいい感じだった。

 しかし、あの鈍重なレイバーで、弾速の遅い散弾で、火器管制使わずに、その他の要因もあるにせよ、勝てるか?というとちょと無理があると思うんだ。灰原(ヘリのパイロット)が、遊び的に戦闘をやってるってのが無いと成立しない。その辺を「娯楽映画だから」としてアリとするなら、もっと娯楽に徹するべきところはいくらでもあったと思うので、余計に気になる。本部への強襲や、それでも生きている後藤田など、前作との対比として彼岸の戦争がこちら側に来たカットが必要だったのだろうが、いやしかしソレをやるならもうちょっと上手くやらないと、無理があり過ぎる。

不満点が少なくない。むしろ一般的な感覚で判断するなら、確実に”ダメ映画”の範疇に入ってしまうだろう。内容の方は、劇場アニメ『パト2』を実写でトレースしたとは言え、かなりスケールが縮小しているというか、ポリティカル・フィクションとしての強度が弱いのが残念。それは登場人物の心情に最も端的に表れ、テロリスト側も警察側も「行動原理が見えにくい」というところが難点と思われる。『パト2』でテロの首謀者だった柘植行人は、首都東京を舞台に架空の戦争状態を作り出す目的でテロを仕掛けていたのだが、今回の敵は11年前に柘植が起こした事件を”再現”することだけが目的のようで、そこに彼ら独自の信念みたいなものはほとんど感じられなかった。せっかく吉田鋼太郎みたいな渋い役者をキャスティングしているのに、物凄く薄っぺらいキャラクターになっていたのがもったいない。

さらに、戦闘ヘリのパイロットの灰原零(森カンナ)に至っては、自衛隊内部に彼女のデータが存在せず、とっくの昔に死亡していたことが判明する。つまり”灰原零”という人間なんて初めから存在しなかったということ…?

対する特車二課の面々も、「嫌ならやめてもいいんだよ」という後藤田隊長に「嫌です」と言わない理由が見当たらないというか、そもそもレイバーで戦闘ヘリと戦うって無理があり過ぎるというか(笑)、納得できない部分が多々あった。アニメ版の『パト2』は、バラバラになっていた特車二課のメンバーが集結する場面一つ見ても感動的に描けていたのになあ…。

あと、個人的に気になったのは、どうも高島礼子演じる高畑慧のキャラが南雲しのぶとかぶっているような気がしてしょうがないんだよねえ。もちろん、キャラそのものは全然違うんだけど、喋り方というか声のトーンが良く似ているのだ(後藤田にかかってきた電話がどちらの声か一瞬わからないほど)。しのぶさんに榊原良子を使うなら、もっと違うタイプの女性キャラを出した方が良かったのでは?

本作に「緊張感」があったならば、終盤の展開を、もっと面白く観れたに違いありません。しかし、本作には「緊張感」が皆無です。東京都内で、擬似的とはいえ「戦争」が勃発してしまうという緊急事態が起こっているというのに、驚くべきことに「緊張感」がないのです。

透明で撃墜不可能と思われる最凶の戦闘ヘリが、次々と東京の印象的な建物を破壊しているのに、犠牲者の描写など皆無だし、きっと恐怖におののいているはずの都民の姿もあまり見かけません。別に残酷描写が見たいわけではないけれど、そのために、ちっとも「恐怖感」がないのです。「崖っぷち感」もないのです。当然、「やっつけたれー!」という高揚感もありません。これは、P2でも同じでした。しかし、P2では、「驚くべきほどリアルなニュースのアナウンス」「幻の爆撃シーン」「都内での自衛隊の出動シ-ン」などによって得体の知れない空気が作り出され、犠牲者描写なくして、見事「緊張感」を漂わせていました。

アニメの手法を実写に持ち込む時に咀嚼しきれてない印象がある。お話のタテツケが焼きなおしなのでなおさら目立つ。「今回はパト2と実写の16年の差分そのものを描くことがテーマ」みたいな事をインタビューで言っていたが、そのテーマを客が見たいかどうかは別の話だし。映画単独でもうちょっと楽しませて欲しいと思う。