マヒロ

アベンジャーズ/インフィニティ・ウォーのマヒロのレビュー・感想・評価

4.5
『ウィンターソルジャー』と『シビルウォー』で既に実力は折り紙付きのルッソ兄弟、MCU10周年という節目の年の集大成ではどんなことやってくれるんだろうと思っていたら、まさかこんな作品を持ってくるなんて…と、思わず唖然としてしまうような映画で、やはりこの監督只者ではないなと再確認。

一番はやっぱり今回のヴィランであるサノスで、ガーディアンズオブギャラクシーを仲間に加えていよいよ大集合といった感じのアベンジャーズを差し置いて、明らかに主役のような扱いを受けているところにまず驚き。今までのMCUのヴィランは主人公の影のようなキャラクター設定が多くて、それ以上でもそれ以下でもない薄めなキャラが多かったんだけど(例外は『シビルウォー』のジモとか『ブラックパンサー』のキルモンガーとかくらいでは。)、サノスははっきりと血の通った一人の生き物として描かれていて、映画はアベンジャーズと名を冠しているものの、待ち受ける障害を次々とかわしながらある一つの目的のためにサノスが突き進んでいく、ピカレスクロマン的な一面の方が強かった気がする。
そんなサノスに押されないようになのか、ヒーローそれぞれにも漫画的なケレン味たっぷりの見せ場が用意されているのも良かった。単独映画でイマイチだったドクター・ストレンジや、コメディリリーフの側面が強いガーディアンズオブギャラクシー達もしっかり戦闘で活躍していて、そこら辺の交通整理の巧さも流石だなと。

ニューヨークにサノス一味が来襲したシーンの、トニーが何か異変に気付く→外から微かに悲鳴が聞こえる→扉を開けると外は阿鼻叫喚の地獄絵図…という流れや、『ブラックパンサー』でオシャレさを極めたエンドロールとは正反対の墓碑銘みたいな無機質なクレジット、絶望を絵に描いたような静かなラストの"消滅"シーンなど、ゾッとするような「引き」の演出の巧さも本当に凄い。
ややクサいメロドラマ的な展開も、ラストでそれをひっくり返すための前振りに過ぎないのではないかと思える。

DCが目指しているようなクールなダークさではなく、悪を魅力的に描く捻くれたダークさはまさに自分好みのトーンで、ここでも格の違いを見せつけられたなと思った。間違いなく今年を代表する一作。

(2018.34)[13]
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