朱音

シビル・ウォー/キャプテン・アメリカの朱音のネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

本作ではヒーロー達がその超人的な能力で強大な敵とのド派手なバトルを繰り広げてきたその裏側で、その戦いに巻き込まれ、傷を負い、大切な人を失った側の存在がクローズアップされる。
前作ウィンターソルジャーではアメリカにおける正義の象徴ともいえるキャプテンが、時代を経て、アメリカ社会の変容による今日的な情勢の中で彼の正義、彼をキャプテン・アメリカたらしめる在り方というものが、そのアメリカの敵になってしまうという切り口で、もともと勧善懲悪として始まったコミック原作のスーパーヒーローものを現代的に再解釈してみせたマーヴェルだが、このシヴィル・ウォーではシネマティック・ユニヴァースの主軸たるアベンジャーズ全体に焦点を合わせ、現代的な解釈をさらに一歩進めた展開となっている。

ほとんどアベンジャーズの映画だが、お祭り映画としての側面が強い純エンターテインメントであるアベンジャーズ・シリーズでは踏み込まない領域の題材を「キャプテン・アメリカ」シリーズで描く。
この卓越した企画力こそMCUが大成功を収めている秘訣なんだろうと思う。

これまで展開してきた作品でしっかりとキャラクターとその在り方、連携や絆を描いてきたからこそアベンジャーズのヒーロー達が二分され、衝突する展開に圧倒的な説得力と、絶大なインパクトをもたらしている。
シリーズを通して観てきたならば、これで燃えない訳がない!

ただ、個人的には前半のアクションの凄まじさに比べて、中盤以降やや緊迫感に欠ける印象。
前半、特にキャプテンを中心としたチームによるラムロウ捕縛作戦、そしてキャプテンがバーンズと再会した矢先に、特殊部隊による襲撃、さらに突如現れたブラックパンサーの猛追を躱しながらの逃亡劇というくだりの、前作ウィンターソルジャーで見せたパルクール、銃撃戦、格闘、チェイスのハイブリッド・アクションをさらに研ぎ澄ましたような演出の素晴らしさ、映像の完成度は、ヒーローアクションというジャンルにおいて、ちょっともうこれ以上のものは想像が付かないという見事さで、とにかく圧巻だった。

空港で両陣営に分かれての大激突シーンは間違いなく本作における目玉となるシーンであり、たしかに一堂に会する場面は展開上燃えるし、それぞれのキャラクターのアクションの見せどころをサービス満点に描ききっているし、満足感も高いのだけれど、どうしても軽妙におしゃべりしながらの殴り合いは緊迫感に欠ける。
シリアス一辺倒だと悲壮感が過ぎるという配慮があるのも分かるし、アントマンやスパイダーマンのキャラクター的にもコメディ要素が必要となるのも分かる。ならばいっそここの場面はお祭り的に、という意図があるのかもしれないが、どうしても前半あれだけ緊張感のある見事なアクションを見せられた後だと正直見劣りしてしまうと感じた。

トニーが真相に気付いて、キャプテンと合流した辺りでひょっとしてこのまま円満解決?という不安感というか、肩透かし感を見事に、良い意味で裏切ってくれたラストにも拍手。2人の対決にも悲壮感があって切ない。オチの付け方もちゃんとしている。

複雑な展開やそれぞれのキャラクターの思惑などを非常に分かりやすく丁寧に描いた脚本、彼らの会話の自然さ、台詞が嘘っぽくなく、役者たちの掛け合いも本当に素晴らしい。
朱音

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