Masato

ブラックパンサーのMasatoのレビュー・感想・評価

ブラックパンサー(2018年製作の映画)
4.5

マーベル映画最新作

海外ではMCU史上最高の評価で、アメリカではスターウォーズ/最後のジェダイを超えるヒットを記録している。そんな記録に相応しい、素晴らしい出来だった。

2時間ちょっとの尺の中で、19世紀から今までの黒人に関する文化的問題を全て1つのストーリーの中に纏め、しかも違和感なく、そして説教臭くなくエンタメに昇華されていて、完璧と言っても過言ではない映画のできよう。

ワカンダがアフリカ大陸の地下に溢れるヴィブラニウムというとてつもないパワーを持つ鉱石を発見したが、それを知られると資源を奪いにやって来るため、いままで隠されていた。というストーリーは、まさにセシルローズが象徴的な、西洋諸国によるアフリカ大陸の植民地化と「ダイアモンド」の占有を下敷きにしている。そして、奴隷化の背景、アメリカでの黒人差別の背景…ここまでのテーマを描ききっていて、しかも一つ一つが独立したテーマではなく、一つの大きなテーマに帰納していく。
そして、悪役までもが、単なるワカンダとその国王の脅威となる存在だけでなく、そういった白人中心主義に蹂躙された背景を持っている。それが功を奏して、悪役そのものに善悪をつけられない魅力を感じることができる。(アメリカ人の悪役が攻めてくるところはさながら植民地化をすすめているようだった)

この映画は、悪役が黒人であるように、白人と黒人の衝突を描くわけではない。虐げられている事実を背負う黒人同士が衝突する話である。まさに、これは公民権運動が盛んだった1960年代、キング牧師とマルコムXが衝突した時と似ている。その時代に活躍していたのが「ブラックパンサー党」である。

さまざまな要素が事実と結びつくような内容となっていてとても素晴らしい。

そんな側面もありながら、国王の父が死に、主人公ティチャラが若くして国を統べることになり、それによって生じる重圧・責任を描いている。次第に、主人公は国のリーダーとして成長していくという話にもなっている。

特に良かったのが、悪役のキルモンガー。
最近のアメコミ映画は、悪役の存在が素晴らしく、単なる勧善懲悪だと思っている人は度肝を抜くであろう。彼は社会的弱者を救うという目的を持ってワカンダを襲いに来る。立場を変えれば正義の主人公となり得るのだ。この映画では、「正義」と「正義」がぶつかり合う。そういった点では「シビルウォー」を思い出す。
正義と正義がぶつかり合うことで、主人公のティチャラは新たな成長を遂げる。つまり、悪役から新たな「正義」を学ぶのだ。
「ジャスティスリーグ」のステッペンウルフを見てほしい。ただの侵略者で中身が空の魅力がない悪役だ。それに比べて彼はどうであろう。とても魅力的である。

前述した黒人の歴史に触れることでも素晴らしいとも思えるが、さらに飛躍して普遍的なテーマへと繋げている。
ワカンダは「ヴィブラニウム」を事実上独占している。同じ人類が争いを続ける中で、見て見ぬ振りをしていいのか。「正義」を知ることで、黒人社会を生きる彼らは、耐え難き悲惨な歴史を捨て去り、我らだけでなく世界を救おうと決意する。未来の幸福のために、過去を捨て去り助け合いをしていくという、テーマも描かれている。
追記
ここはアメリカファーストを描いていると思う。「資源を独占し自国だけが豊かになれば良い」という思考がトランプを始め国民に蔓延している。そんな状況へのアンチテーゼとして描かれているのであろう。
追記終了

以上がこの映画のストーリー部分の素晴らしいところ。次からは映画のストーリー以外の部分に触れる。

非常に音楽が多彩で良かった。アフリカ大陸の民族音楽を混ぜ合わせたBGMと現代のブラックミュージックのBGMが、ワカンダであれば民族音楽、悪役のシーンとなればブラックミュージックなど、舞台などによって切り替えられていくのが良かった。
そして、ケンドリックラマーによる楽曲。Pray For MeとAll The Starsは本当に良い。

アクションシーンに関して、007スカイフォールのマカオのシーンのようなスパイのシーンもありながら、カット割りなしのロングテイクで進行していく乱闘アクションが凄い。カーアクションもサシ勝負もフライトアクションもアリ。バラエティに富んでいて新鮮味がある。

ジェームズブラウンを見事にコピーしていた演技派のチャドウィックボーズマンと監督の作品に三連続で出ているマイケル・B・ジョーダンは注目株、最高の演技。フォレストウィテカーはさすがベテランと言うべきか。ダナイグリラ、「それでも夜は明ける」のルピタニョンゴ、「ゲットアウト」のダニエルカルーヤなど…黒人俳優たちの力量は計り知れない。昨今問題になっているホワイトウォッシュは全く感じられない意欲的なキャスティングで素晴らしい。
そして、マーティンフリーマンはいつもの受け身な役柄で、モーションキャプチャーの役しかしてないアンディサーキスが実写で出演。猿の惑星の時の演技はオスカーレベルだったので、実写でもその力を発揮。見事。
そして、1番気に入ったのが、主人公の妹役のレティーシャ・ライト。細身で役柄も相まって可愛い。

監督はライアンクーグラーという新鋭監督。ここ最近の中ではかなり注目している監督。彼の長編デビュー作は「フルートベール駅で」という、黒人に不当な対処をする白人警官を真っ向から描いた傑作であった。その後、「クリード」を撮り原点のロッキーを超えるレベルの感動と興奮を作り上げた。この人は名作製造機なので、どんどん作ってほしい。

最高のMCU映画でした。

客観的評価 50点
主観的評価 40点
=90点