Yoko

ブラックパンサーのYokoのレビュー・感想・評価

ブラックパンサー(2018年製作の映画)
3.4
MCU18作目。


コメディと壮大なスケール、そして湧き上がる高揚感といった面白い要素をすべてつぎ込み、そして大成功を収めたシリース前作『マイティ・ソー バトルロイヤル』。
その傑作のせいもあってか、陛下の真面目な性格をそのまま切り取ったようなシリアス路線はちょっと味気がなさ過ぎて、シリアスが「退屈」に転じてしまった。
あまりにも真面目過ぎるのでバランスをとるために一応盛り込まれるギャグもちょっとサムイ。
コメディセンスで言えばシリーズ1ナイかも。
ある種、主人公の性格と作風の一致という点においては成功している。
ただ、意外性がなく淡々と進む冗長な話が本当に退屈で、決して飲み込めない話ではないが率先してこちらから飲み込んでいこうという気が起こらない。
MCUのスピンオフ程度のスケール。
話の規模も空気感もノーラン『ダークナイト』の下位互換といった風だろうか。
シリアス路線で大成功した『シビルウォー』と比べても高揚感が欠ける。
しいて言うならば"中"揚感くらいは感じられたかな。

アクションも描かれている内容の割にはこじんまりとした印象で、決して下手ではないのだけど高揚感とまでは巻き起こらない。
あくまで”中”揚感。
暗闇に紛れて活躍する冒頭のアクションも暗すぎて、観ている身としても分かりづらい。
中盤のカーチェイスなんかももっと盛り上がってもいいはずなのに…。
ブラパンの特殊能力もドカーーンと周りを吹き飛ばすくらいで、強力な能力のクセに魅せ方に華がない。
手榴弾に対する使い方はナルホドと思わされたが、ほとんどは一辺倒な使い方。
なにより、決戦でほとんど活かされてないのが残念。
その決戦で小休止を与えるリニアは『SW EP1』のダースモール戦のバリア的役割を果たしているが、シリアスな今作に必要なはずのはりつめた緊張感が全く発生しない。
これも本当もったいなかった。

悪いとこばかり挙げてしまったが良い点も。
テクノロジーとは一見無縁に思えるワカンダの、自然とテクノロジーが融合した景観や施設はとても新鮮。
古代文字を模したようなアルファベットなどもクールでカッコいい。
何よりも今作で初登場する多くのキャラクターの魅力は存分に引き出されており、『ドクター・ストレンジ』のような行動原理が意味不明のキャラは登場しない。
誰であろうと王には絶対の忠誠心を持たなければならない女将軍なんか最高にカッコいい。
諸部族のファッションも決してすべからく原始的ではなく、テクノロジーが発達しているワカンダらしい装いも見られる。
登場人物が良いだけに話の展開が味気ないので、これらのキャラクターもなんか活かされてない気がする。
アクションが求められるMCUだけあって、人間ドラマの展開にそこまで気が回らなかったのだろうか…。
そのアクションが素晴らしかったらまだしや、ちょっと消化不良というのが…。

最後に一言。
陛下、マスク頻繁に外しすぎ。
顔を出して演技をさせたい魂胆があったのかもしれないが不必要に外しすぎでしょ。
終盤の大乱闘では息継ぎが必要なのかと思うくらい多い。
妹さん、通気性高めてあげてください。
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