スキピオ

ブラックパンサーのスキピオのレビュー・感想・評価

ブラックパンサー(2018年製作の映画)
4.0
”銃なんて原始的ね”

「クリード」を成功させた監督ライアン・クーグラ、黒人を正面から描き、黒人の未来を指し示すという作家性を見せながらきっちり娯楽作に仕上げてきた。「若手監督の大作抜擢系」では頭ひとつ抜けてるね。

バトルシーンが地味って意見があるけど、主人公の闘いが基本的に近接武器か「拳で殴り合って一対一の決闘」で決着をつけるのがよかった。最近食傷気味の街をぶっ壊すような「超人バトル」じゃなくて地に足がついているという意味で。韓国釜山パートはあるけど。(脱線するけど日本のレクサスは出せても、ロケ地はもはや当たり前のように韓国。韓国のロケ誘致力はやっぱすごいんだなと。)

あと最近のアメコミ映画はキャラの弱いヴィランが多かったけど、今回のヴィランであるキルモンガーには、とある「たしかな正統性」があり、 彼の主張と行動には筋が通っていて主人公と合わせ鏡にもなっている。ヴィランのキャラが立っているだけで映画が半分出来上がっているようなもので安心して楽しめた。

難点は、今回の影の主役の超素材「ヴィヴラニウム」の大盤振る舞いをしすぎたのでは?というところ。あの人は助かるのに、この人は助からないの?ってとこ。「キングスマン ゴールデンサークル」もそうだけど”オーバーテクノロジー”を出す時は万能ぶりに振り回されないように気をつけないと。妹の先進の発明品紹介は楽しかったんだけど、あと夢のユートピアの「ワカンダ」の暮らしとかカルチャーとかがどうなっているのか街の奥行きをもっと見たかったな。

黒人の歴史と背景を物語に絡めるとどうしても暗く、ソリッドになりがちなので、妹の科学者以外に明るいキャラクターがもう一人ほしかったところ。


とはいえ、社長、神様はわかるけど(?)「国王」なんてねぇ?と期待値低めだったのでけっこう楽しめた。シリーズ一作目は新鮮でいいね。