ブルームーン男爵

ブラックパンサーのブルームーン男爵のレビュー・感想・評価

ブラックパンサー(2018年製作の映画)
3.9
アメリカで大ヒットを記録した本作。マーベル・シネマティック・ユニバース第18作目。

本作が特徴的なのは、主要キャラがほぼ黒人という点だ。ハリウッドではメインキャラは白人と相場が決まっていたが、本作の大ヒットの定説が覆された(アメリカだと出生児の白人の占める割はすでに5割を切っている)。非白人を白人が演じる”ホワイト・ウォッシュ”はもう必要ないのだ。本作は、アフリカの超高度文明を持つ架空の小国ワカンダを舞台にした筋書きになっている。

アフリカは人類発祥の地であり、また高度な文明があったことが知られる。しかし、多くは欧米の植民地になり、資源は収奪され、プライドも傷つけられた。本作では、高度な文明を誇ったアメリカの小国が鎖国から脱し、その消極的姿勢から国際的技術協力するラストとなっているが、これはアフリカ系のみならず、アメリカのマイノリティを鼓舞するものだ。パクスアメリカーナが終焉を迎えつつあり、またEUの弱体化など、白人世界が低落し、多極構造化する世界的な潮流において本作が大ヒットしたのは偶然ではあるまい。

ただ、そうした社会情勢抜きにして本作は面白い。ストーリー展開、スタイリッシュな映像、迫力あるアクションシーンなど、どれも見応えがある。

興味深いのは、敵役のキルモンガーも全くの悪人というわけではない点だ。ワカンダは従来高度な文明や資源を隠し、その結果、侵略されずに平和を維持してきた。一方で、キルモンガーはワカンダの技術を使い、世界中のマイノリティや被抑圧者にワカンダの武器を渡し、抑圧者を打倒するという主張をしている。これはキングス牧師とマルコムXの対立に似ている。この対立はX-MENでも同様で、非暴力・非服従のキングス牧師と徹底抗戦のマルコムXの対立である。本作でもそのような対立軸が読み取れる。ストーリーも結構楽しめる。

個人的にはマーベル作品の中では5本の指に入る傑作だと思う。