もやマン

ブラックパンサーのもやマンのレビュー・感想・評価

ブラックパンサー(2018年製作の映画)
4.2
【世界観とヴィラン】

この映画の魅力の1つは、ワカンダ等の完成された美しい世界観。

圧倒的な映像美をもとにアフリカの地に隠されたワカンダを作り上げたマーベルはさすがとしか言いようがない。

ワカンダに入ったときの景色の変わりようには観てるだけで気持ち良さすらある。
そのワカンダの兵士、部族、歴史、科学技術、全てが完成されている。


そして、魅力の2つ目。本作の最大の魅力ともいえるのは、ヴィランであるキルモンガーという人間だろう。一見破壊衝動があるだけのチャラついたこん畜生に見えるが、彼の人生は悲哀に満ちたものだ。
オープニングの、誰かがワカンダの説明をしているシーン。あれは、キルモンガーの父親が彼に語った、おとぎ話なんだろう。
彼は、そのおとぎ話をずっと覚えていて、あるのかないのかわからないワカンダを追い続けていたんだろう。ティチャカ元ワカンダ国王がメディアに出、ワカンダ及びブラックパンサーの存在が明るみになったとき、父のおとぎ話はほとんど事実だったと彼が理解したときに芽生えた復讐心。そして思い出した父の無念。そして、父が楽しそうに語ったおとぎ話の舞台であるワカンダへの憧れ。
それらいろいろな感情が、キルモンガーというヴィランを作り上げた。
その背景を思うと、彼の行動には共感せずにはいられない。

ブラックパンサーと、キルモンガー。
2人がそれぞれの正義を抱え、戦う。

キルモンガーは最後まで気持ちが揺るがない。それがかっこいい。ただのヤカラではなく、父親想い。行動理念に惚れる。
ブラックパンサーも、元国王の過ちを認め、キルモンガーを理解している。


そしてキルモンガーのラストが美しい。
この映画のみのヴィランとなるのは寂しいが、やはりこのラストがワカンダにとって必要で、ブラックパンサーはこれを機会にワカンダとともに前へ進む。


クオリティの高い映画だと思う。

賞レース常連も頷ける。
黒人をキャストスタッフに多用したのも今の映画界にとって大きな意味を持ってるのだろう。

アカデミー賞でもなんらかの結果を残して欲しい。
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