ヨッシー

キャプテン・マーベルのヨッシーのレビュー・感想・評価

キャプテン・マーベル(2019年製作の映画)
3.7
『最強すぎて逆にアガらない?』

マーベルコミックのスーパーヒーロー“キャプテン・マーベル”の実写映画作品にして、マーベル・シネマティック・ユニバースの第21弾。

超人的ま能力を持つキャロル・ダンヴァースは地球を舞台としたスクラル人とクリー人の戦いの中で失われた記憶の謎に迫っていく。

監督は『なんだかおかしな物語/僕の人生を変えた5日間』『ワイルド・ギャンブル』などもライアン・フレックとアンナ・ボーデン。
主演は『ルーム』でアカデミー賞主演女優賞を受賞したブリー・ラーソン。

2019年最大のビッグイベント『アベンジャーズ/エンドゲーム』が迫る中、そのキーパーソンとなりそうな新ヒーローの1発目。
MCU初の女性ヒーローの単独主演作ということもあってかなり期待値が高かった。

基本的に現実の時間とリンクして進んでいくMCUの中で今回は珍しく時間を遡って、『アイアンマン』より前、90年代を舞台としている。
その為、90年代のヒットソングが流れたり、当時の流行のものが登場したりと90年代感を楽しめる。
僕自身、20代半ばなので、70年代や80年代のネタはほとんどついていけないが、90年代なら分かるものが結構あって楽しめた。

本作の主役のキャプテン・マーベルことキャロル・ダンヴァースのキャラクターはもちろん今後のMCUを引っ張っていくのに十分な魅力あるものになっている。
キャプテン・アメリカのような何度倒れても立ち上がる強さ、女性でも男性に負けない芯の強さを感じる。
また、記憶を失った事で自分という存在が分からない不安定さもブリー・ラーソンの演技力が見事に表現されていた。さすがはアカデミー賞主演女優賞といった感じ。

彼女以外だと、シリーズではお馴染みのニック・フューリーが大活躍。『アベンジャーズ』以降冷酷な指揮官というイメージが強かったが、それ以前のちょっと茶目っ気があったキャラになっていて、本作のコメディリリーフ的なキャラになっている(ちょっと偏りすぎな気はするが)。
コールソンと共にCGで若返った姿で登場しており、その技術はすごい。

そして、本作の敵として登場するスクラル人。詳しくはネタバレになってしまうのでほとんど語れないキャラだけど、ストーリー的にもテーマ的にも深みのあるいいキャラクターになっている。本作で1番の驚きは彼らの扱いだったかもしれない。

あと、ネコが可愛い💕

MCU作品らしく、他作品とのクロスオーバーも面白いところで、本作はクロスオーバー要素は比較的多いが、一応単独作品としても十分に楽しめるバランスにもなっている。
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』ではほとんど描かれなかったクリー人の描写やフューリーがアベンジャーズ計画を立てるきっかけなど、シリーズファン的には楽しいところは多い。

このように外しなしのMCU作品らしく、基本的にはクオリティの高い良作にはなっている。
が、個人的には『アベンジャーズ/エンドゲーム』を直前に控えた作品としてハードルが上がり過ぎていたせいか、イマイチアガらない。あまりにも期待値が高かったせいで、普通に面白いけど、想像よりは...というところで止まってしまった印象が強い。

その理由として、まずはやっぱりキャプテン・マーベルが強すぎる。
終盤は能力が覚醒したキャロルに大暴れになるが、その強すぎる能力に対して対等どころか少しでも手こずらせられるような敵が全くいない。
もちろん本作の作り手も彼女が強すぎる事は理解してたとは思う。実際終盤までは彼女に力にリミッターをかけている。その上で終盤は抑えられていた力を解放して暴れまわる爽快感もあるが、やはりその上で最後は彼女とギリギリの戦いを繰り広げる強敵が欲しかった。せっかくのド派手なクライマックスなのにキャプテン・マーベルと敵との能力差があり過ぎて、戦いの緊張感、緊迫感が全くなくなってしまっている。

また、アクションシーンも全体的に(MCU基準で)平凡で、見やすく分かりやすいアクションではあるがインパクトに欠ける。ここ最近のMCUはアクションシーンのレベルがかなり高い作品が多かったから、それらと比べるとちょっと地味に見える。あと、アクションの良いところを予告編で見せ過ぎ。

終盤のフューリーの扱いもちょっと不満で、正直なところ終盤は彼がキャロルと行動を共にする意味がイマイチない。MCU全体の流れとしては意味があるが、わざわざあそこまで近くにいる必要はないし、どうせ一緒に行動するなら何かしらの活躍はさせてほしい。
正直フューリーは完全にギャグ担当になってしまっている。
それと、彼がアベンジャーズ計画を立てるきっかけを含めシリーズの繋がりも予想を超えるようなことがなく、見る前から「こんな感じかな。」と思っていた程度のことしか起こらないから驚きがない。
逆にフューリーが片目を失う理由はかなりガッカリ。何アレ?ギャグなの?普通に戦いの中での名誉の負傷ってことでよくない?

キャプテン・マーベルというキャラクターとしては彼女に大きな影響を与えるキャラクターであるマー・ベルの扱いも物足りない。
コミックの方でもキャロルはマー・ベルの意思を受け継ぎヒーローとなり、映画版でもその点は受け継がれているが、肝心のマー・ベルの出番が少なく、キャロルと直接絡んでるシーンが少ないから彼女がマー・ベルの意思を継承した感じがイマイチ薄く、形だけな感じがする。

キャロルの記憶の謎をめぐるサスペンス要素に関しても悪いわけではないけど、そこまで驚きがあるわけでもなく、ちょっと拍子抜け。
それに本作の鍵となる重要なあるアイテムだけど、なんで“アレ”があそこになるのかかなり謎。シリーズを全て見てる身としては「またそれを奪い合う話かよ。」と思っちゃうし、“アレ”を地球に残していっちゃっていいの?とは思う。“アレ”を狙ってまたクリー人とか来ちゃうんじゃないの?むしろキャロルは地球を離れない方がいい気がするんだけど(地球を巻き込まないために離れたという解釈もできるが)。
どうもシリーズの辻褄の合わせ方が多少強引に感じる。

ちょっと不満が多めになっちゃったけど、決して駄作とは思ってない。MCUの作品として十分な良策ではあるんだけど、期待が大きかった分ちょっと物足りない感じがしてしまった。でもMCUなんだからそれぐらい求めてもいいでしょ?それぐらいMCUが大好きだし信頼してるんだから。

どちらにしても『アベンジャーズ/エンドゲーム』へと繋がる重要な作品だし、これを見ればさらに『エンドゲーム』が楽しみのなるのは間違いない。
見てないと『エンドゲーム』でいきなり「え?なんで?」となってしまうかもしれないので、今のうちに劇場で見ておくのがオススメです!
ヨッシー

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