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アベンジャーズ/エンドゲームのnetfilmsのレビュー・感想・評価

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 金色のガントレットに収められた赤・橙・紫・黄・緑・青の6つの石。その力と一瞬のフィンガー・スナップによって半分消し去られたスーパー・ヒーローたち。その姿は『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』において最もショッキングだった。あれからちょうど1年、前作とコインの表裏のような緊密な物語は、静かに幕を開ける。アイアンマンもキャプテン・アメリカもブラック・ウィドウも漏れなく、自身の人生に深い深い大きな傷を負う。それは9.11以降のアメリカの光景とも無縁ではない。家族がいるアイアンマンも、家族を失った他のヒーローたちも、自身の欠落した何かを必死に思い求め、縋る。実際に武力行使に出る直情型の人間も、後に無残な腹を人前に晒す。『アベンジャーズ』シリーズこそ、ヒーローたちが苦悩を色濃く表した作品はないだろう。シリーズでは実に快調な歩みを続けてきたアイアンマンもキャプテン・アメリカも、オールスター・キャストとなる今シリーズでは明らかに苦悩の表情を抱えて来た。

 今作でスーパー・ヒーローたちは、何もない広い荒野に足を踏み入れる。それはハリウッドの映画史にとって、考えうる最上の判断だろう。このアイデアを思い付いたルッソ兄弟の決断が尊く、各々のパーティの面々に、これまでマーベルが培って来たマーベル・シネマティック・ユニバース21作品の怒涛の歩みが滲む。当初はこれ程までにマーケットが拡大するとは思わなかった『アイアンマン』シリーズの歩み。兄弟の確執と地球外の覇権争いを描いた『マイティ・ソー』シリーズの歩み。正統派のスーパー・ヒーローの登場を決定付けられた『キャプテン・アメリカ』シリーズの歩み。そこに超人ハルクの復活や、キャプテン・マーベルの躍動、そして今作を真に駆動させるエンジンを担うのは、意表を突いた『アントマン』の登場だろう。これまで積み重ねて来たマーベル映画の自信と、スーパー・ヒーローたちの焦燥感の対比。そこにルッソ兄弟は最高の伏線を複数用意し備える。従来のテンポをさらに推し進めた衝撃のカタルシス、広い世界に放り投げられた過去・現在・未来の語り手たちの余白は、美しい放物線を描きながら結びへと向かう。

本日21:00〜ミヤラジ77.3FM『We Are Movie Lovers.』は、
ジングル制作者プレゼンツ音楽映画特集!!

ゲストは当番組のジングルを作って頂きました
ギタリストの岩崎和広さん。

音楽家さんの目線で数本の映画を読み解きます。
番組中に岩崎さんの生演奏もありますよ〜!! お楽しみに!!
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