Tako

アベンジャーズ/エンドゲームのTakoのレビュー・感想・評価

3.5
間違いなく超大作!
…ではあるものの、絶賛するほどだったかと言われれば果たして…

20本の映画を一つの大きなストーリーとしてまとめ上げる気力と腕力は素晴らしく、きちんと最後は絞めてくれた点は非常に好感が持てます。
前回の終わりから一体どうやってアヴェンジするのか、といったテリングの上手さや、絶望的な状況に追い詰められたキャラクターを巧みに表現した俳優らの芝居は見事でした。

しかし、最終決戦に突入する前の作戦に、かなりのムリを感じました。

同じのキャラクターが同じ世界線上にいる。
→通信が混濁する。
→敵に情報がばれる。

といった展開は、プロットがそうだから以上の理由がなく、かなり強引なやり口であり、前半の丁寧な世界観の描写にくらべるとかなりの粗が目立ちます。
キャラクターが賢ければ防げたであろう事態でストーリーを進める手法は他のマーベル作品でもしばしば見かけられますが、最後の締めくくりでもそれかい、といった感が否めません。


また最終決戦についても『元の世界にストーンを返却しなければならない』という命題をほぼほぼ無視しているのが気になりました。

タイムマシーンを起動し、戦闘中にも関わらずもっとも強力な武器であるストーンを手放し、なおかつ強敵サノスを倒さなければならない、という非常に困難なミッションを、どうやってアヴェンジャーズがクリアしていくのか――

というのが見どころになるにも関わらず、あっさりとそれを無視する始末。(というか、別にそれをしなくても問題ない、という納め方には首をひねります)
戦闘が終わってからストーンを返してもすむのであれば、わざわざストーン返却を戦闘中にやろうとしなくても良いのでは?

というのも、最後のスタークの決意や行動をさせたいがために、これらの問題(やらなければならないこと)を外にうっちゃっているのがもっともマズイ点です。

しかも、その行動そのもの――指パッチンに共感を持てません。

一度自分たちがやられたことをそのまま仕返しするというのは、アヴェンジにはぴったりかもしれませんが、いくらなんでも子どもっぽすぎます。
ストーンの力で敵軍すべてを塵にするのは、もっとも手っ取り早い解決方法ではありますが、そこにテーマも主張もありません。

さらに、サノスはその方法で死なないにも関わらず、スタークはあっさり死んでしまうのも首をひねります。
ドクターがその方法(ストーンの力を使い敵を滅ぼす)を予見しているのであれば、あらかじめストーンを使うための手段や防衛策を講じることはできたはずです(科学力等で)。ドクターが黙っている理由もありませんし。

感動させたいがため、スタークの決死の覚悟ですべてを終わらせるシーンにしたいがためにこしらえたものにすぎません。
そこに蓋然性がない以上、"つくりもの感"を超えた感動は得られませんでした。

テーマについても気になる点が散見し、サノスは一貫して、

「人間の数が多すぎる。減らして管理しなければ世界そのものが滅びる」

と主張しつづけていました。
これは現代の様々な問題に通じる主張であり、やり方は乱暴かつ強引なものの、言いたいことは共感できる点があります。(方法が駄目なので論外ですが)

これに対してアヴェンジャーズたちは、

「仲間がヤラレた! 許さない! きー!」

と終始怒り狂っているばかり。
サノスの主張にたいして、明確な返答は一切ありません。
お前の言っていることは理解できる。でも、俺たち、私たちはこうこうこうやってそれを解決する。お前のやっていることは間違いだ!
という、"ヒーロー"が提示しなければならない主張が、この作品からは何も発せられませんでした。
行動で示しているんだよ、という意見もあるかもしれませんが、最終的には敵がやったやり方と同じやり方で敵を滅ぼしているにすぎません。

『アヴェンジャーズはあくまでも復讐者であり、ヒーローではない』

という主張、テーマなのであれば激しく納得できますが、きっとそうではないでしょう。


とはいえ、最高レベルのCGやアクション、音響や音楽など、映画館でなければ体験できないさまざまなイベントが盛りだくさんで、映画を観たなぁ! という満足感はトップクラスなのは間違いありません。
またスタークに並々ならぬ思い入れがある人であれば、なんら問題なく感動できると思うので、アヴェンジャーズシリーズを楽しんできた人にとっては最高の一本なのは絶対です。
細かいことは気にせず、良質な映画体験、明快なアクションものを楽しむには(いささか全編を通すには長いものの)、最上級の作品です。
Tako

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