コロッケもごば

殺されたミンジュのコロッケもごばのレビュー・感想・評価

殺されたミンジュ(2014年製作の映画)
3.0
うーむ。深い。

そして、長くて長くて、寝そうだった。
ははは。2時間は長いわよ・・・

キム・ギドク監督の言いたいことはわかる。
それはぜんぶ役者のセリフに込められているから。
ストレートに伝わってくる。
でも、結局、解決策はないのよね。

最初、民間人による世直し隊が必殺仕事人みたく悪党どもを次から次へと始末していくものと思いきや、

ここに登場するのは、マ・ドンソク演じるリーダーの個人的な恨みを晴らすために徒党が組まれている。

彼の個人的な恨みを晴らすために、社会に不満を募らす見知らぬ人たちをネットで巧妙に誘い出し、彼らの怒りをあおり、自分の意のままに操ろうとする。

まさに、ヒトラーやISやトランプの手法と同じ。
恐ろしいね。


でも、つくづく不思議よね。民主主義を勝ち取りながら、自分たちが参加して作り上げた国家という意識をもてず、なぜか貧しい生活に追いやられていく人たちがいる。

世襲制のごとく、貧しい人間はずっと貧しいまま。一票を投じているのに、世の中はなにも変わらない。

だからといって、暴力をつかって世直しをしよう!という発想にこの映画はさまざまな葛藤を盛り込みながら大きな警鐘を鳴らしている。
すごいね。視点がすばらしいや。

「わからないけど、あんたのやってることは間違っている」
「じゃあどうやったら、あいつらに反省させられるんだ?」
「わからない。わからないけど、忍耐力が必要なんだ」

リーダーの悪人への行き過ぎた暴力を見て、
たまらず部下が彼を止めながら放った言葉がわたしたち人間の悩みを映し出してる。

人は、暴力を振るわれたり、搾取されたりするのはもちろんイヤだけど、自分が暴力を振るったり、他人を搾取するのもイヤなんだ。それを厭わない人間もいるだろうけど。


この世に、天国はないよね。
善人は損なのか。正しく生きることはできないのか。どうして今の幸せを感じることが出来ないのか。そこにあるのに。
深い映画でした。


キム・ヨンミンさんの8役は、なにかの意味があるんだろうけど、私にはわからなかったな。
人の心にはいろいろな顔があるという暗示なのか。

考えないでおこう。
考えた瞬間からキム・ギドクの罠にはまる。