riKi

スポットライト 世紀のスクープのriKiのネタバレレビュー・内容・結末

3.7

このレビューはネタバレを含みます

2020/09/13

Vol.87「スポットライト 世紀のスクープ」

米国「ボストン・グローブ紙」の《スポットライト》という特集記事を担当するチームがカトリック教会の神父による性的虐待を報道。長年に渡って組織ぐるみで行われた隠蔽してきた衝撃のスキャンダルの裏には何があったのか。

エンドロールで被害にあった方々が住んでいた地域のクレジットが列挙されますが余りの数の多さに衝撃。いかにアメリカ全土で大規模でショッキングな事件だったのかと想像させられます。
また本作はアカデミー賞で作品・脚本賞をはじめ他多数のタイトルを受賞しており、同点からも社会的意義のある映画となっていることが分かります。

劇場前鑑賞作品「オフィシャル・シークレット」からの流れで、実話ベースの物語であり強大な権力(前作では政府であり本作ではカトリック教会)に立ち向かうという大枠で類似する本作をチョイス。

カトリック教会という現代の大半の日本人には縁がないと思われる題材がベースになっていて一見遠い話のようにも感じるが、

“宗教”とは?性的虐待された被害者たちが声をあげない、もしくはあげたくてもあげれない、長年黙殺されてきた理由になるほどのものなのか?

自分が無宗教だと思っているのなら貴方にとって“信仰”や心の拠り所にするものとは?

また宗教や信仰のことを考えたことがないのなら視点を別に変えて、自分の所属するチームや会社を本作の隠蔽を行ったカトリック教会になぞらえて考える”組織”や”システム”とは?

そして日本にいても考えることができる“権力”や“マスコミ”のあるべき姿や姿勢は?

作品を通して知らない世界を見ることが可能に。
映画の世界をジブンゴトとして捉え自分の心で感じたものを重ねて《スポットライト》を当てることによって“考えるきっかけ”をくれる映画の一つ。


最後に

劇中映画中盤、被害者たちの弁護士を長年担当するラベディアンが主人公でグローブ紙でスポットライトのメンバーのマイクと夕食を取りながら呟く

“if it takes a village to raise a child, it takes a village to abuse one”

という言葉がとても印象に残りました。

調べるとどうやらアフリカのことわざらしく日本語に訳してあったのを引用すると

“子供を育てるのが村であるなら、子供を虐待するのも村なんだ”

アルメニア系の移民もである彼が、移民国家と言われるアメリカのボストンの町に古くから住んでいても、コミュニティからは疎外されていると彼の実感から来るものを重ね合わせて滲み出た言葉であろう。

またこの言葉は性的虐待の問題が聖職者個人の問題ではなく、カトリック教会の組織やシステム全体で起こっている問題であることを示唆している。



















riKi

riKi