COZY922

ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅のCOZY922のレビュー・感想・評価

4.1
トランクは魔法空間の扉。アリスが落ちた兎の穴や タンスの奥に広がるナルニア共和国を彷彿とさせる広大で不可思議な世界。人と付き合うよりも動物と触れ合っているほうが好きな ちょっとコミュ障気味の魔法使いニュートが魔法動物を回収する様子はさながらポケモンGOに興じているかのよう。

MX4Dで鑑賞した。ファンタジーは世界観の中にいかに入り込めるかが満足度の鍵を握るので4Dは正解だったと思う。前半は、クレイジーで愛嬌たっぷりの魔法動物のビジュアルを堪能しながらワクワク感や躍動感と共にこの世界に足を踏み入れることができ、後半はダークサイドに堕ちた者を巡って繰り広げられる闘いの臨場感を上げてくれた。

多々ある魅力の中でも多くの支持を得そうなのはやっぱり魔法動物!中でもお気に入りは、見た目がモグラ+カモノハシで 光るものが大好きな問題児ニフラーと、手の中に収まるサイズの 苗木のようなボウトラックル。トランクからひょんなことから逃げ出した魔法動物達と彼らをこよなく愛するニュートとのやりとりは誰の心の中にも在る童心をくすぐってくる。

そんな愛すべき登場人物達が1920年代のNYを舞台に巻き起こす騒動は コミカルな風味だけでは終わらず、中盤からは一転して魔法界の存在や人間界との均衡を揺るがしかねない事態に発展していく。心に闇を抱えながらもそれを何とか抑え込んできた者。抑圧してきたものが大きければ大きいほど ひとたび裏切られた時の絶望感は底知れないほどに大きく、そこから生まれる負のパワーの破壊力は計り知れない。ダークに転じた際に陥る闇の深さは より素直で純真な心の持ち主のほうがはるかに深いというセオリーがここでも露わになっていた。

思ったよりもダークな世界観の中、いい意味で異色のキャストだったのが ”一般人代表 ” ジェイコブ。太め+口髭+おっちょこちょいなジェイコブは魔法の存在すら知らなかった人間。彼が魔法に目を丸くしながらも徐々にそれを受け入れ 惹かれ やがて魔法界の人々との友情を築く様は本作における水先案内人のような役割を果たす。私達と同じ一般人で 温かくユーモアがある彼の存在のおかげで観客は彼の目線で映画の世界に入っていけるのだ。終盤 彼が登場する雨のシーンとラストシーンが好き。甘酸っぱいような切なさ。忘却がもたらす寂しさと虚無感。信じたい 言語外の(体感としての)記憶・・etc。ファンタジーを観る気満々だったのが、思いがけずヒューマニティの部分に惹かれ、胸にジワリと来たり頬が緩んだりしたのは嬉しい誤算だった。次作が今から待ち遠しい。
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