JIZE

ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生のJIZEのレビュー・感想・評価

4.0
アメリカ魔法省に囚われていた闇の魔法使い"グリンデルバルド"が欧州護送の際に逃亡した事を受け人間界を転覆させようと目論む野望を阻止すべく再び魔法動物たちとパリの魔法界へ向かうニュートのスペクタクルな冒険録を綴ったシリーズ第2弾の続編‼︎2D字幕のドルビーアトモスで鑑賞。まず前作『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅(2016年)』でのNYの街中が壊滅した世界での3ヶ月後が舞台で魔法省によってニュートが国外への旅行禁止令を出され頭を悩ましながらもお馴染みの魔法動物ニフラーやボウトラックル等との可愛い再会に歓喜した。また前回で驚愕の恐るべき闇のチカラを予感させたクリーデンスやニュートと恩師ダンブルドアとの師弟愛,あるいはニュートとその兄との兄弟関係,グリンデルバルドとダンブルドアの因縁など前作以上に人間ドラマが複雑に絡みあい濃密である。ホグワーツ魔法魔術学校の校舎が登場したり"みぞの鏡"で生徒たちが授業を受ける一連の流れはあのメインテーマと共にハリーたちへの郷愁感を感じざる得ない。特に有名な"ポート(移動)キー"や"ポリジュース薬"がキーアイテム的に活用される描写は旧シリーズを観ていた視点としても涎垂ものであった。とにかくオブリビエイトが効かないジェイコブに笑わされたしニフラーから寛大な癒しを得る前作の美点がうまく踏襲されながらもプロットはノーマジが滅びた邪悪な新世界を目論む威厳で支配するグリンデルバルドの視点をメインに物語は核心へ迫る。旧シリーズへの回帰要素や主要キャラたちの変異と成長,未曾有の危機に瀕する魔法界など微量ではあるが着実に進んではいる前作の直後が濃厚に描かれた続編だ。

→作品概要。
監督はハリーポッターシリーズの後半4作とシリーズのスピンオフの前作『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅(2016年)』を手掛けた名匠デヴィッド・イェーツ。原作はJ・K・ローリングの「幻の動物とその生息地」で原作者自身が脚本も担当する。主演は前作に引き続きエディ・レッドメインやキャサリン・ウォーターストン等が同役でそのまま続投。また本作は校長アルバス・ダンブルドア役にジュード・ロウが新たに出演するなどキャスト面でも豪華な顔ぶれが一挙に集結する事となりました。

→生みの親を探す者とそれを逆手に野望を叶う者。
今回特にエズラ・ミラー演じるクリーデンスの戸惑いつつもルーツを探るべく善にも悪にも揺れ動き魔力を暴走させる心境にメインプロットの支柱が置かれていたように感じた。同時にそれはジョニー・デップ演じるグリンデルバルドとの野望を叶えるべく繋ぎ目の橋渡しを担っており終盤の大円団に向けた加速感は監督のお手の物といった印象である。グリンデルバルドの脱獄から巧みな話術で賛同者集めに至るプロセスは丁寧に描き込まれていたように思えた。特に冒頭の逃走劇で闇夜の魔法省から馬車で囚人を護送するくだりは『ハリーポッターと死の秘宝PART1(2010年)』を彷彿とさせるような夜道の空中戦でビュンビュン映像で疾走感を煽らせ本編で間違いなく盛り上がる箇所だった。彼の慈悲なき残虐性が突き抜けてるからこそ勧善懲悪なキャラが立っており観ていて溜飲が下がる。強いて苦言を言えばニュートとグリンデルバルドが対峙する直接対決や作品の山場があるようですぐ終始したり全体的に薄口で処理されていたのは否めなかったです。やはり今回でも魔法動物たちのチャームある可愛さのほうが魔法バトルよりもかなり印象に残りました。

※印象に残ったフレーズ。
「ダンブルドアは君の死を悲しむか……」

→総評(闇の野望が熾烈化する旧信者向けの第2弾)。
総じてファン向けに設計された続編の第2弾だったように感じました。いわゆる前回より背景に重みがあり面白い。というのも物語は一転グリンデルバルドの邪悪な思惑に前回の魔法動物集めからシフトチェンジしつつもホグワーツの軌跡を辿ったり馴染みの呪文が問題を突破する重要な攻略のキーになるなど旧ふぁんでも堪能できる安定性がある作品だったのではないか。また主要キャラたちの些細な機微にも変化が描かれている。例えばニュートとティナの沈下状態にあるその後やジェイコブとクイニーの愛模様などかなりシリアスに描写されてる辺りもあり魔法バトルより見所だった。また"賢者の石"を創造したニコラス・フラメルが思わぬ形で合流するなどふぁん心をくすぐるシーンも多々ある。特に魔法動物に至っては中国属のズーウーが無数の魔女ネコを相手に縦横無尽に暴れ回るので俺的にはかなり満足で一番すきな場面でした。他にも日本から派生する河童が妙なビジュアルで登場したり前回でピンと来なかったからか今回ではだいぶ役割や魅せ方に工夫がされていたように思える。作品の不満は前回よりティナやクイニーのキャラ薄やグリンデルバルドが野望を果たすためクリーデンスを取り込むのに必死で出演箇所は多いがあまり印象に残らない点だろうか。あとシリーズの座長であるダンブルドアが宣伝で煽ってるほど存在薄で活躍しないのも否めなかった。終盤の青い炎が四方八方に飛び散る魔法バトルのコレじゃない感もぶっちゃけあった。というよう舞台をNYからパリに移し再び人間界と魔法界の支配を目論む黒い魔法使いとの決戦が始まる。前作の鑑賞はマストで旧シリーズからも断片的に用語が結構登場するのである程度は世界観をなぞった上で物語の次章となる続編を盛大に楽しんでもらいたい。
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