かささた

ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密のかささたのレビュー・感想・評価

3.3
ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密を観ていました。

今回僕は劇中の最重要人物であるゲラート・グリンデルバルドを観に行きました。前2作ではジョニー・デップがキャスティングされていたこの役ですが、ジョニーのDVをめぐる裁判での敗訴を受けて2年前に降板が決定していました。その後まもなくマッツ・ミケルセンによる引き継ぎが決定したのですが、僕はマッツ・ミケルセンが大好きなんですよ。なのでストーリーとかはどうでも良くてマッツ・ミケルセンのグリンデルバルドを観に出掛けたようなものでした。

僕は頭の中で「ジョニー・デップだったらどうだったろうか」と想像力で変換しながら観たりもしていたのですが、ジョニー・グリンデルバルドがかなり奇異な役づくりをしていた事に気がつきました。ジョニー・グリンデルバルドはコスチュームもほとんど仮装みたいに変な格好で劇中でも浮きまくっていたのですが、演技もけれんみの強いちょっとわざとらしい感じのものでした。ジョニー・デップはグリンデルバルドをロック・スターみたいな存在としてとらえていたと思います。それはそれで悪目立ちしていた訳でもなく、特異な存在として浮くべくして浮いていたように思うのですが、一方、マッツ・グリンデルバルドはこのJ.K.ローリングとデヴィッド・イェーツの魔法世界に薄気味悪いくらい馴染んでますね。普通のスーツにコートそれにマフラーという服装で、髪の毛に一部メッシュが入っている他に変わったところはありません。両目の色が違うという特徴すら(僕が確認したところでは)消えて無くなってしまいました。ロック・スターというよりは会社の重役といった風情です。ですが、リアルな悪役ではあります。マッツ・ミケルセンは「いつものマッツ・ミケルセン」であるだけでじゅうぶんに悪の雰囲気を出せるのでしょうか。それにしてもジョニー・デップの扮装にいっさい寄せる気が無いのには潔さを感じましたね。映画の外の事情を何にも知らないで観た人はマッツ・ミケルセンをグリンデルバルドとは思わなかったはずです。グリンデルバルドはマッツ・ミケルセンが演じることによって名前だけ同じの別人になってしまったと言って良いと思うのですが、そうであっても映画世界がよりリアルになったので結果オーライではないか、というのがこの交代劇のおおざっぱな感想です。

さて映画そのものは前作のクリーデンス出生をめぐるミス・ディレクションをふくむ複雑な話が無かったこともありますが、とても単純で分かりやすかったです。メインストーリーと直接関係ないサブ・ストーリーにやや時間を割きすぎている気もしましたが、凝った仕掛けもわざとらしいひねりもなくて、入り込みやすかったです。
2作目ではっきりと分かった事として、ゲラート・グリンデルバルドの台頭をアドルフ・ヒトラーの台頭と重ねている、のがありました。そして巧妙なファシズムの有り様について、人々が国家主義や全体主義、民族主義に引かれていく様子をリアルに描いていく様子がありました。この作品でもその辺りは変わっていません。悪はただの悪ではなく、それを悪と思わずに支持する人間によってどんどんと肯定されていく恐ろしさが描かれています。ハリー・ポッターとの違いは悪というものの複雑さや、自分の中に内在する悪について詳しく手抜きせずに描こうとしているところのように思いました。

それにつけてもタイトルにあるダンブルドアの秘密とは何だったんでしょう?そんな秘密らしい秘密が明らかになったようにも思えなかったのですが。ただ彼の選んだ生き方とそれが故の彼に付いて回る寂しさのようなものは感じました。そしてジュード・ロウはマッツ・ミケルセンとは違ってマイケル・ガンボンのダンブルドアにどんどん寄せてきますね。

あとグリンデルバルドの交代劇と同じようにか、メインキャストの一人がほとんど出てきませんでした。これも大人の事情によるものなのでしょうか。

ここから下に書いたのは2020年にジョニー・デップが降板したときのものです。面白かったし反響もあったのでそのまま残します。


はい。困りましたね。
この記事を書いている日付は2020年11月7日で本作品で重要な役を演じているジョニー・デップの降板が知らされた直後くらいです。それ自体は残念なことですが決まってしまったものは仕方がない。しかもこの降板劇は本人の意向ではなくてDVをめぐる倫理的配慮を背後に抱えているので今後この決定が翻ることはまずあり得ないでしょう。なのでジョニーの後をいったい誰が引き継ぐのか?ということを中心に書いていきたいと思います。無責任なゲームとして。

そもそもこのシリーズは原作があったハリー・ポッターシリーズとは異なり原作者J・K・ローリングが直接脚本を書いています。大まかな構想は元々彼女の頭の中にあったとしてもストーリーやキャスティングはより映画向けに創造し変更が可能な自由度があったと推測されます。ファンタスティック・ビーストの一作目でコリン・ファレルの変身が解けて実はグリンデルバルドであることが分かった瞬間、誰もが「えー?!」と驚いたと思うんですよ。つまりグリンデルバルドという物語内において知名度の高いカリスマ性のある人物は物語の外においても知名度の高いカリスマ性のある人物に演じてもらうことが脚本によって決められていた。ジョニー・デップありきのグリンデルバルドだったと思うんです。なのでグリンデルバルドの性格や設定もおそらくジョニー・デップの影響を受けてJ・Kによって創造され変更されていったのではないか、とも思います。
そうしたグリンデルバルドを別の人間に演じてもらう場合、J・Kや他の制作陣はどのような基準でどのような俳優を選ぶのでしょうか。


①あえて無名の俳優を起用する。
実力がありながらもこれまであまり主役を演じたことのない俳優を選ぶ、というのは007のシリーズが主人公のジェームズ・ボンドの俳優を変更点する際に採ってきたやり方です。ジェームズ・ボンドは演じてきた俳優の加齢に伴って引退、変更されますから新しい若い俳優を起用することでボンドにも新しさが加わってシリーズは新鮮さを取り戻します。なので新しく選ばれる俳優は前作でボンドを演じていた俳優に似ている必要はありません。ピアース・ブロスナンとダニエル・クレイグは全く似ていませんものね。しかしファンタスティック・ビーストに置いてグリンデルバルドを若返らせたり新鮮さを与えたりする必要は無いのでこの路線は無いかもしれません。

②ジョニー・デップに良く似た俳優を起用する。
これはあるかもしれません。さっきも書きましたがグリンデルバルドというキャラクターにはジョニー・デップ自身が反映されているはずですから、「ジョニー・デップらしさ」が「グリンデルバルドらしさ」ということになってジョニー・デップにルックスや雰囲気が似ている俳優が起用されるということは十分あり得ます。しかしなージョニー・デップに良く似た俳優なんていましたかな。①との混合で「実力がありながらもこれまであまり主役を演じたことのない(ジョニー・デップに似た)俳優」が起用すされるかもしれません。誰だか知りませんが。
③ジョニー・デップと同等の知名度や実力を持った俳優を起用する。
この展開が映画ファンとしてはいちばん燃えますよね。グリンデルバルドがジョニー・デップだ、と分かるシーンはサプライズでもあるので観ている人を驚かせたいというキャスティングによる演出が施されていると思うんです。3作目では劇中においてそのようなサプライズシーンはおそらく望めませんが、それまでのグリンデルバルドを良しとしてきたファンを納得させる意味でもサプライズのある有名な俳優を起用する、ということはありそうです。ハリー・ポッターシリーズにおけるダンブルドア校長の交代、リチャード・ハリスとマイケル・ガンボンのように俳優自体はそれほど似ていなくても、メイクや衣装である程度キャラクターに寄せて、後は俳優の個性を尊重する、という方式が取れそうです。
年齢や実力、知名度からヒュー・ジャックマン、クリスチャン・ベール、ユアン・マクレガーあたりはどうでしょうか。レオナルド・ディカプリオやブラッド・ピットが起用されたら本当に驚いて失神してしまうかもですが彼らの出演してきた映画の作風から考えてオファーがあっても承諾しなさそうです。個人的にはユアン・マクレガーを推します。彼はあまりグリンデルバルドのようなカリスマ性のある悪役を演じたことは無かったと思うのですが、このシリーズでダンブルドアを演じているジュード・ロウとの相性がとても良いように思えるからです。(二人は無名時代からの親友ですが今まで共演作がありませんでした)

また3つの妄想には入りませんが、美形中年ということでマイケル・ファスベンダーやマッツ・ミケルセンも良いように思いました。最近あまり表舞台には現れていない俳優を起用することでサプライズを狙うのであればオーランド・ブルームやヘイデン・クリステンセンはどうでしょう。少し若い気もしますが。

追記です。
最後に面白い可能性を思い付きました。グリンデルバルドをコリン・ファレルに演じてもらう、というアイデアです。何らかの不具合が生じて変身した人物の姿が定着してしまったとか何とか脚本で後付けしてもらえば良いのです。そうすればハリー・ポッターに出てきた老人のグリンデルバルドの両眼が同じいろであったことの説明もつきます。そしてコリン・ファレルだと何が良いのかというと、誰からも文句が来ないという利点があります。ジョニー・デップの印象が強すぎたグリンデルバルドはその後を誰が演じても違和感を指摘されるでしょう。しかしコリン・ファレルだけはそれを免れるのです。何しろ彼もグリンデルバルドであったことがあるのですから。

追記です。今日は11月26日マッツ・ミケルセンが正式にグリンデルバルドに決まりましたね。いいと思います!

追加です。今日は2021年12月14日。「ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密」の予告が解禁されました。
ちょっと笑ってしまいました。ジョニー・デップがほとんどコスプレじゃないかというくらいにメイクや服装に凝っていたからマッツ・ミケルセンもあの扮装に寄せていくもんだと思ってたんですよ。そしたらグリンデルバルドの方をマッツ・ミケルセンに寄せてきましたね。
何が言いたいのかというと新しいグリンデルバルドは「いつものマッツ・ミケルセン」なんですよ。グリンデルバルドというよりレクター。というかマッツ・ミケルセン笑。グリンデルバルドに「寄せる」というのはマッツ・ミケルセンの役者としての実力や経歴に対して失礼だ、と思っているかのようなまさかのキャラクター大改変。良いと思います!
かささた

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