HicK

ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密のHicKのレビュー・感想・評価

3.5
《本当に誰も何も知らない物語》

【暴け!不正選挙!】
今作も政治色というか社会派テーマというか、ファンタビのカラーは健在。ただ、ウィザーディングワールドで「選挙・当選を防ぐ」っていうのがメインストーリーになるとは思わなかった。で、どうしても"過激派だけど信者が大量に存在する人物"ってドナルド・トランプを連想してしまう。意図的だよね?たぶん。

【その点で残念な点】
せっかく前作でグリンデルバルドは自身のイデオロギーをもとにカリスマ性を発揮して、信者を沢山従えてたわけなのに今作は不正選挙って、かなり小物感が増してしまった。ちょっと残念。

【ラリー:Jウィリアムズ】
このシリーズの役者陣は全員好き。特に今回はラリーが初登場と思えないぐらいに溶け込んでいて、たくましくカッコいいキャラだった。ジェシカ・ウィリアムズが好演。初めて見る女優さんだけど、来日インタビューでめちゃくちゃオタク気質だったのが好感を持てた 笑。とても可愛らしい。

【ダンブルドア:Jロウ】
ジュードの演技!冒頭のグリンデルバルドとのシーン、最高。グリデバが現れた時の表情とかヤバい。全編通して今回の彼の演技は根底に愛やノスタルジー、少しの恥じらいなどが感じられるような繊細な演技で素晴らしかった。

【エズラ/ジョニー/マッツ】
役者陣の中でエズラ・ミラーも大好きだったが、もったいない不祥事。今シリーズのようなミステリアスさと危なさ、DCのフラッシュ役のような自由奔放さとオタク感、そして私服の奇抜さ、芸術センス。そんな幅広い表現力が好きだったのに残念…。今作も良かったのになぁ。

ジョニー・デップも残念なんだけど、グリンデルバルドに関しては、正直、ジョニーが正解かマッツが正解かよく分からない。が、今作のダンブルドアとの仲を考えると、ジョニーの演じ方では想像が出来ないので、マッツのしっとりとしたグリデバの方がしっくりきた。人間味が増した。

【誰も全貌を知らない物語】
ユニークな設定。未来を予知できるグリンデルバルドに対抗するため、誰も全容を把握していない予測不可能な計画にでるニュートたち。掴みは良い。ワクワク。

【ただ、ガチで誰も分からない】
ワクワクだったんだけど、物語を追ってみると本当に誰も何もわかってないから、どの行動が正解かも分からない。どっちが優勢かも分からない。それは失敗なのか、成功なのか。ピンチなのか。見ていてよく分からない。

【そこに待っていたオチ】
*軽度のネタバレあり
最後に今回の物語の全てを救った"カバン"。ただ、それがどこから登場し、なぜ成功したかも『誰も全貌を知らない』で片付けてしまうとは 笑。種明かしは?笑。真実は観客にも教えてもらえない。

で、その後の"誓い"が切れた理屈もよく分からなかった。

【今作もサイドストーリーが沢山】
前作もそうだけど、大小のストーリーがありすぎて「これは必要なのか?」と感じてしまうくだりもあった。例えば、テセウスがいったん捕まってしまう展開だったり、ユスフの先入も必要だったのかなぁ。気づかなかっただけでなんかに役立ってたっけ?

【総括】
キャラクターも俳優陣も好き。根底にあるダンブルドアのドラマはとても新鮮だった。ただ、今作の「誰も知らない作戦」が最後までフワフワした印象だったのと、J・K・ローリングの目指したい方向性(政治色と粗い群像劇)については前作同様、賛同し切れなかった。回を追うごとにニュートなど当初のメインキャラクターたちが細々としたサイドストーリーとして扱われているのが、ちょっと残念。

それでもこのシリーズのMVP、ジェイコブ aka ダン・フォグラーは今作も良かった。あなたがいるから楽しい。
HicK

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