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COMET コメットのJIZEのレビュー・感想・評価

COMET コメット(2014年製作の映画)
3.1
パラレルな6年間の軌跡を通じ彗星が降る夜に出逢った男女の永遠に回り続ける恋模様を紡ぐマジカル調なラブロマンス!!プラネタリウムの中で映画を観ていた感覚だ..審美的な蒼き世界観にも研ぎ澄まされた。現在迄に観た恋愛映画で1番神経を駆使。"時間の秩序"に翻弄され奥行きが無限に存在する。明確な今を指し示す時間軸がボヤかされる演出も不思議な余韻を。順序を整理し直せば目眩が..。つまり恋愛物でよくフォーカスされる人物の叙情な機微より,構成の仕方に難を衒う恋愛映画だという事。構成自体は6年間の出来事を時間軸を遡り並行or断片的に描かれるシステム。観終わり『アバウト・タイム(2014年)』と『博士と彼女のセオリー(2015年)』をMIX版を彷彿とさせた..観るタイミング次第で賛否な意見を出し合えたり鑑賞者同士でおおいに論える映画だと思えましたね。ちゃんと観てなければ繋ぎ目が曖昧なため置いてけぼりクラいます。

まず原題『Comet』は"彗星"を指しまさに貴重な瞬間ゴトに輝きを放つデルとキンバリーの姿そのものの数奇な運命を示唆させ綺麗な意味合いに。彗星と恋模様に稀少な関連性を持たせた事は完璧で脱帽した。また主役デルが呟く開幕の台詞「これは夢じゃないよ..」示唆的に思い返せば時既に遅しかと..そして1番惹かれた場面,中盤,電車の連結部分をキンバリーが両耳にイヤホンを指しデルの手を握り一緒に渡る場面..100億点がボーナス特典で加点された。王道の恋愛映画の構造を脱構築し科学的な地点から現在を見つめ返し過去,未来,現在を織り交ぜて"いまorここ"に断固掴むべき明瞭な目的性がある事を投げ掛ける。一般受けしない事は確かだろうけど実験的な試供品的でそういう目線ではだいぶ楽しめましたね。中々言葉でこのダウン調な世界観を説明する事は難解なんだ。随所にグラデーションを用い赤と青の光線が飛び交いカラフルに世界を照らす幻想美の演出は1番の美点だった。直感の裏に潜む未知な可能性を感じずにはいられない。登場人物がほぼ2人でエンドまで継続される設定も奇妙に感じた。

概要。ある恋人たちの6年間に渡る会話の数々を"時間"や"空間"を巧みに利用しランダムに切り取りながら展開するラブストーリー。監督はテレビドラマ『ミスター・ロボット』を手掛け映画では本作が初長編作品となるサム・エスメイル監督。主演にはデル役に『Mr.タスク(2015年)』のジャスティン・ロング。キンバリー役に『サヨナラの代わりに(2015年)』のエミー・ロッサム。

この映画。時間軸の指標に左右されず(楽観or悲観思考な)物の見方で価値(生き様)を問う棄却的なメッセージを込める映画に取れた。あらゆる指標を現在に問い掛け世間の見方や生き方を問い直す映画なのかと。つまり"始まり"も"終わり"も当事者が全て決め時間,距離,空間,定説の概念を捨て"いまorここ"に類稀なき未来永劫な有限性を見出す突き詰めポジティブな精神を謳うものだという事。

人物の対比。
主役デルは典型的な悲観論者で死や時間の概念に怯え恐怖を感じている。一方,キンバリーは逆で時間自体に始や終がなく永遠に回り続け途切れる事なき概念だと見方を取る。要するに価値観を対比させ両者ぶつけ合わす事で研磨され"第3の主眼"を提示する通説だけではない生き様が変わる事の意義を証明した。

物語面。
初めて出逢ったL.A.公園,パリのホテル,再会を果たす列車など記憶の断片を通じ飛び飛びに2人の世界がめまぐるしく変化していく。現実世界とパラレルワールドの境目も区別できない部分も正直あった。終盤,キンバリーの告白を受けデルは衝撃を受ける場面でも「5分の原則」と呼ばれり時間を追い瞬間を読み取る思想を思い浮かばせ空間が止まる。全体的に少し進捗があれば事態が別の時間軸に飛ぶため感情に浸りたい場面でランダム式な構造のため感情移入し難い箇所もあった。普通の恋愛映画だと観れば痛い目にあいます。

敢えて苦言を呈すと,単体の映画である事を念にこの映画を観た時に断片的な寄せ集めで物語をかたどる構造なため物語内部の緩急が取れない部分はどうしても否めない。ランダム式なパラレル構造を持ち合わすにも接続を成す基盤が全体的に脆弱で勿体無い印象でした。構造面と映像美(世界観の創造)に本腰を入れすぎシワ寄せがキタ感じかな。あと口喧嘩や葛藤が大半で外部が絡むハプニング要素が過不足に思えた。コレだけ外連味たっぷりな世界観を構築して意外性が少ないのも拍子抜けした。評価軸が空中分解しそうな映画ですね笑。

総評。
あらかじめ,ハッピーエンドの映画を観たい方は『ラブアクチュアリー』等を是非。本作はそういう映画でないので..観た者の経験値や状態,時期により感じ方or刺激の受け方が大幅に異なる作品だと感じた(賛否両論も同様に)。題材を考えれば考えるほど相乗効果で苦味が研磨され日常に活かせる啓蒙的なメッセージも多数。役者陣ではエミー・ロッサムの眼鏡姿はいいんだけど役柄的に後半にかけ面倒なウザさが余計だったかな。あとジャスティン・ロングはこの後の出演作『Mr.タスク(2015年)』でセイウチ人間に肉体改造される事を配慮すれば何とも言い難い悲愴感が漂う。物の見方を強調した事で魅せる異化効果な感じさせ方もナチュラルで研ぎ澄まさた。何年後かに再度観たい映画。この映画を観て観客がどう感じたとかそれ自体を誘導的に考えさせるだけでも勝因!!に私は感じた。映像美1本でも勿論,恋愛映画としても有る程度クセがある事を見込めば断然お勧めです!!