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ヘイル、シーザー!の一人旅のレビュー・感想・評価

ヘイル、シーザー!(2016年製作の映画)
4.0
コーエン兄弟監督作。

1950年代のハリウッドを舞台に、超大作映画『ヘイル、シーザー!』撮影中に誘拐されたスター俳優を取り戻すべく奮闘する男の姿を描いたサスペンスコメディ。

コーエン兄弟による50年代ハリウッドの内幕モノ。やはり、魅力はコーエン流に味付けされたキャラクターたち。西部劇では一流の馬上テクを魅せるがセリフをまともに言えない大根役者のアクションスター、マーメイド姿がセクシーだが傲慢でキレやすい若手ブロンド女優、ハリウッドのスキャンダルを追う双子の女記者など、強烈な個性が勢揃い。
キャスティングも一流で、主演を務めた『ノーカントリー』のジョシュ・ブローリンを始め、『オー・ブラザー!』のジョージ・クルーニー、コーエン組のフランシス・マクドーマンド、スカーレット・ヨハンソン、レイフ・ファインズ、ティルダ・スウィントン、チャニング・テイタム、クリストファー・ランバート、ジョナ・ヒル等そうそうたる顔ぶれ。無駄な配役がひとつもなく、それぞれが持ち味を発揮。フランシス・マクドーマンドの老け具合が少々衝撃的。

演出もコーエン流。緊張とユーモアが入り混じりながら延々と続く、大根役者と監督による激しい演技指導。フィルムの映写機にスカーフが引っかかり、あわや死にかける女編集者。何の前触れもなく始まる水兵ミュージカルは見事な完成度で、アクションからダンスまでそつなくこなしてしまう筋肉俳優、チャニング・テイタムの芸の幅の広さに驚かされる。

コーエン流のキャラクターとユニークな演出が前面に出されており、それが本作最大の魅力ではあるのだが、おふざけの中に50年代ハリウッド・国際情勢の笑えない実態を再現してみせてもいる。資本主義と共産主義、赤狩り、核開発競争...そして、根底には神と信仰というテーマが見え隠れする。ゆるゆるな能天気コメディのように見えて、実はそうではない。いかにもコーエンらしい、“何やら深い”50年代ハリウッド内幕コメディの佳作だ。
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