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ヘイル、シーザー!のmimitakoyakiのレビュー・感想・評価

ヘイル、シーザー!(2016年製作の映画)
4.0
コーエン兄弟の古めの作品は好きで結構観てて、ビッグ・リボウスキやファーゴ、ノーカントリーなんかはもちろんのこと、世間では評判のよろしくないバーン・アフター・リーディングですら結構楽しめたりする私なので、本作もスコア低くて合うかどうか若干心配していましたが、やっぱり大丈夫でした。
面白かった!

1950年代のハリウッド。
映画スタジオの何でも屋(トラブル揉み消し屋) エディに数々のトラブルが降りかかり、それらの尻拭いや根回しやらに奔走するという話です。

共産主義者達によるハリウッドスターの誘拐や、人気女優の妊娠、訛りのきつい大根役者、それらのスキャンダルを嗅ぎつけてくる記者…。
エディを中心としながら群像劇のようにいろんなエピソードを散りばめつつ、テレビの隆盛に押されて映画産業が斜陽にならぬようにと、歴史大作やミュージカル、水中レビュー、西部劇、メロドラマなど映画ならではの魅力をアピールするべく登場する数々の劇中劇と、ジョシュ・ブローリン、ジョージ・クルーニー、スカーレット・ヨハンソン、チャニング・テイタム、ティルダ・スウィントン、レイフ・ファインズ、フランシス・マクドーマンドなどなどの超豪華キャストが魅せる強烈な個性など見どころもたっぷりで楽しめました。

コメディなので笑いどころも多く、マヌケなジョージ・クルーニーの盃と笑い方とか、レイフ・ファインズ演じる映画監督と大根役者のくだりや、マーメイドの衣装を脱いだ時のスカジョのギャップとか、チャニング・テイタムのアクションのキメとか、主役級の役者達が嬉々としてくだらない事をやってる感じがすごく好きだし、劇中劇のクオリティがすごくて、西部劇の馬を使ったアクションもチャニング・テイタムのタップダンスも、万華鏡のように美しい水中レビューも、すべてオマージュらしく残念ながら元ネタは知らないのですが、それでももっと見てみたいと思うくらい素晴らしかったです。

コーエン兄弟の作品て、いろんなトラブルが次々と起こり、それがどんどん悪い方へと転がって最後はどうしようもない悲劇になるというパターンもありますが、今回もいろんな出来事がとっちらかって起こりつつも、今作では最後は元サヤに収まる感じで、映画業界や映画に対する愛やら皮肉やらがたっぷりと込められていました。

ただ、50年代アメリカ、ハリウッドと言えば、赤狩りの嵐が吹き荒れた時代で、ハリウッドの共産主義者は尋問され逮捕投獄され、仕事を干されるなどの激しい思想弾圧や差別をされた事が、「トランボ」や「グッドナイト&グッドラック」でも描かれていましたが、今作では、共産主義者を茶化して荒唐無稽に描いていて、まあそれはコメディだし茶目っ気もあって面白いし良いのですが、あれだけ赤狩りによる犠牲もあったわけで、そこが全く描かれてなかったのは気になったところです。

まあそんな事もありながらも、全体的には笑いどころも見どころもたっぷりで、ほんの短い出番でもきっちりと爪痕を残すフランシス・マクドーマンドをはじめ、俳優達の濃いキャラも大いに楽しめて面白かったです。

76
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