プペ

心が叫びたがってるんだ。のプペのレビュー・感想・評価

心が叫びたがってるんだ。(2015年製作の映画)
2.9
秩父を舞台に、絶妙なファンタジー設定をミックスした″青春群像劇″で大成功した「あの花」スタッフの作品ということでテレビ放送版を視聴した。
岡田麿里脚本は個人的に「鉄血のオルフェンズ」で若干評価を下げたので、再評価できる作品だったと思う。

見終わった第一印象は、これは文学的で人間の「本質」と「矛盾」に迫った力作だろう。
アニメだから成せた出来、実写だとドロドロが過ぎる。
下手すると誤解されやすいと感じたので、批判的な意見に補足して凄みと深さを書かせて頂きたいと思う。


根は熱く、スペックも高いが斜に構えた系00年代主人公がヒロインに当初からモテる理由が少し弱かったり、もう一人のヒロインの菜月の描写が薄いので最終盤の展開が若干意外だったりと、いくつか時間的都合の説明不足感はあるものの非常に爽やかな青春ドラマに仕上がっており、視聴後の清涼感・喉越し感はまるでお風呂上がりに飲むキンキンに冷えたドリンクのような、そんな味わいだ。


かなり回りくどい言い方をしてしまったが、本作はリアルで時に残酷な現実を″アニメーション″で表現してくれた良作と私は言いたい。

非常に″文学″の要素が強く、ファンタジックで大きな奇跡は一切起こらない。
人間のエゴ、青臭さ、嫉妬や僻み、劣等感など、剥き出しの感情も敢えて描き、汚い部分にまで踏み込んでいく。
だけども、誰もがこうした感情を持っていると改めて気付くはず。
リアルな学生たちが隠していた感情に気付き、本音を衝突し合うことで成長していく。
母親とは作れなかった、弱さを出し、甘えられる信頼関係を築いた序盤の3人との展開。
今度は″叫び″が″声″となり、受け止めてくれる友達がいた。
それだけで充分救いなのだと思う。

いくら叫んだとしても、反応し、受け止め、聞いてくれる人がいないと一方通行で辛い。
信頼関係を築いて届ける、そこからコミュニケーションは生まれる。
だけれど、時に現実は残酷で全て自分の思い通りにはならない、経験を積んで人は成長していくのだ。

人は、生きていくうえで傷つけ、傷つけられるのを避けることは出来ない。
でも、「言葉」に傷つき、衝突し、救済されて成長していくのもまた確か。

二時間尺の映画としてはとてもよくまとまっているが、この清涼感が強すぎるゆえの特別な印象のなさ、引っかかりのなさに対して、このスタッフ陣が今後どう打開していくのか、というところはアニメオタクな私としては実に興味深い点だ。



映画鑑賞後、あーでもこーでもないと感想を言い合い、幸福を共有し合える友人なぞいない我が人生。

私もこんな青春時代を過ごしたかった…。

今、私は無性に「心が死にたがってるんだ」と叫び出したい衝動に駆られている。
プペ

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