きゃん

イロイロ ぬくもりの記憶のきゃんのレビュー・感想・評価

イロイロ ぬくもりの記憶(2013年製作の映画)
3.3
アジア通貨危機下のシンガポールの中流家庭を舞台に、住み込みで働くことになったフィリピン人メイドと雇い主一家との心の交流を描いた作品。シンプルに淡々と物語が進んでいくが、リアリティが感じられる。シンガポールのお国事情も垣間見える。

共働きの両親を持つ一人っ子のジャールーは、わがままな問題児で母親の悩みの種だった。母親はフィリピン人メイドのテレサを住み込みで雇い、息子の面倒を見させる。初めは反発するジャールーだったが、真剣に自分と向き合おうとする彼女次第に心を開くようになり…。

ジャールーはわがまま放題のやんちゃ坊主。小学校では問題行動を起こして周囲を困らせてばかりで、メイドのテリーが来た当初は気に食わなくて相当な嫌がらせをする。そんな生意気なジャールーを相手にテリーは本気で向き合い、本気で怒るのでジャールーも懐くようになる。こういう子を相手にするときは、嫌われるのを恐れて何でも言うことを聞いたりするのではなく、嫌われる覚悟で本気で向き合っていくことが大切だと思わされた。いつも不満そうな顔をしていたジャールーはテリーのぬくもりに触れることで少しずつ変化していく。最初は憎たらしさしか感じなかったが、だんだんかわいく見えてくる。そんなジャールーの趣味がロトくじ(宝くじ)の当選番号をチェックすることというのが面白い。

アジア通貨危機下の厳しい経済状況の中での生活。妊娠中である母親は職場でのストレスを抱え、父親はリストラに遭う。日々神経をすり減らし、自分たちのことでいっぱいいっぱいの彼らはとても子供のことまで気が回らない。そのためジャールーは寂しさから問題行動を起こす悪循環。そんな状況を救ったのがメイドのテリーの存在。家族にゆくもりを与える。日々の生活に追われ何が一番大事か見失ないがち。そんな時に他人だけど親身になってくれるメイドの存在が家族を救う。ラストはそれぞれの人間味が出ていて心が温まった。
自分に余裕がないと人に優しくできなくなりがちなので、どんな時でも心に余裕を持っていられる人間になりたいと感じた。
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