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スリー・モンキーズの一のレビュー・感想・評価

スリー・モンキーズ(2008年製作の映画)
3.9
トルコの巨匠 ヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督作品

第61回カンヌ国際映画祭の監督賞受賞作

車で人を轢いてしまった政治家が、自身の運転手である男に金と引き換えに罪をなすりつけたことから広がる家族の軋轢や葛藤、そして欲望と打算と保身から自らを欺く人々の愚かさと崩壊を描く

あらすじはサスペンス風ですが、蓋を開けてみればさすがとしか言いようがない超濃密な重苦しいヒューマンドラマ

タイトルはいわゆる“見ざる・聞かざる・言わざる”の三猿で“スリー・モンキーズ”

セリフもない極端に長い間をふんだんに使ったと思いきや、がっちりと固定されたカメラによるリアリティ満載の長回しの多用、そして周囲の様々な音を効果的に使った生々しい描写の数々
時折ホラーのようなを演出を入れてくるのも気持ち悪いし、終始薄暗く鬱屈とした色味の映像がなによりもそこはかとない気持ち悪さを増幅させる

他のジェイラン作品に比べるとストーリー自体はかなりわかりやすくなっていますが、肝心の物語を説明するような描写や核心についてはっきりさせるような描写は当然ながら皆無
だけどそれが良い、というかそうだからこそヌリ・ビルゲ・ジェイランの映画はたまらない

この想像をかき立てる余白を存分に残し、意図的なほどに“画”で見せようとする姿勢こそが、極めて映画的であり他の追随を許さない監督たる所以
直近三作に比べて足りない所を言うとすれば、壮大な自然を捉える圧倒的な映像美くらい

顔というか表情ひとつで表現し、魅せてくれる役者さんたちも皆最高

ジェイランの作品で2時間を切ってくるとなぜか異常に早く感られますが、これにて日本で観られるジェイラン作品はお終い😢
頼むからもっと配信やレンタル、販売でもいいから対応して欲しい…🙏🏻

〈 Rotten Tomatoes 🍅77% 🍿72% 〉
〈 IMDb 7.4 / Metascore 73 / Letterboxd 3.6 〉

2021 自宅鑑賞 No.202 GEO
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