螢

ナショナル・ギャラリー 英国の至宝の螢のレビュー・感想・評価

2.9
英国のナショナル・ギャラリー(国立美術館)を扱ったドキュメンタリー。
とはいいながら、収蔵作品の概要や系統、ギャラリー成立の歴史といったものは語られない。市民や関係者を前にその作品解説をする職員の姿や、企画展の検討や予算削減に頭を悩ます職員の会議風景、来場者たちの表情などが、切り替わり続ける画面の中で前面に映されていく。(収蔵作品の映像が全く映らないというわけではないけれど、ほとんどオマケ的扱い。)

しかも、職員の肩書や氏名、進行している企画展の概要などの説明が、一切ない。わからない奴に用はないと暗に言われている気もしますが、ここまで徹底されるとかえって潔さを感じます。

ナショナル・ギャラリーを紹介する映画というよりは、ナショナル・ギャラリーの「知の伝道」のスタイルを誇示した作品という印象を受けました。

生き生きと語る解説員たちの表情や躊躇せず述べる独自理論(とても専門的でアカデミック)はなかなかに興味深いものでした。
けれど、ある程度の知識がある人、もしくはある程度の階層にいる人向けという感じでした。
日本の美術館で学芸員さんがしてくれる、簡単なポイントをまとめたビギナー向けの解説が懐かしくなるくらいに、極めてターゲットを絞っている印象。  

結局、冒頭で出てきたギャラリーのどうやら偉い人(人物や肩書紹介字幕が一切ないので断定できない)が発した次の言葉がこのギャラリーの方向性なんでしょうね。

「何が嫌かというと下に合わせ低俗な大衆嗜好に我々が迎合してしまうことだ」

日本では到底口に出来そうもない傲慢なお言葉。ある意味英国らしい気もしますが。

繰り返しになりますが、生き生きと解説するスタッフの姿は印象的ですが、それもギャラリーの熱烈なファンや熱烈なファンや専門家向けという感じで、ナショナル・ギャラリーの作品群や概要を知るきっかけにしたい人には向かない作品ですね。
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