jam

ここに泉ありのjamのレビュー・感想・評価

ここに泉あり(1955年製作の映画)
3.7
永劫に救われることのない世界にいる者が
皆さんの訪れをどんなに楽しみにしていることか
生きている悦びを味あわせてもらえる
この悦びは一生消えない

患者代表が感謝の気持ちを伝える
仄暗いハンセン病療養所

戦後発足した高崎の市民オーケストラ
彼らの慰問演奏に聴き入る入院患者
顔や手足は病気による変形が

アンコールのフィガロの結婚

音のならない拍手が場内を包むと
オーケストラメンバーも感極まり


またある時の目的地は
街から遠く離れた山奥の小学校
山道を楽器を抱えて歩いていく

一生に一度しかオーケストラの演奏を聴くことがない人たちがいる
彼らにとってはどれほどの宝物になることか


はじめてのオーケストラの報酬は野の花
「たった一輪でも花束」
ひとりひとりが口ずさむメロディが重なり
やがて青空の下
アカペラのオーケストラになる


地方の市民オーケストラの草分け
経営問題のみならず、技術面でも中央との実力の差に焦りを覚えて

いよいよ解散寸前
訪問した小学校で
感謝を伝えようと子どもたちが歌うのは
「赤とんぼ」

奇しくも作曲者の山田耕作さんが本人役で出演、オーケストラの指揮も手掛けている


どこまでが史実通りかは定かではないけれど
解散危機を乗り越えたオーケストラに
合同演奏会という救いの手を差し伸べたのも山田さん

ラストの第九は圧巻

音楽に触れることが
それまで、とこれから、を変えていく
創世記を支えた彼らの志は
今もなお受け継がれる
jam

jam