Sankawa7

日本のいちばん長い日のSankawa7のレビュー・感想・評価

日本のいちばん長い日(2015年製作の映画)
3.8
公開当時映画館にて視聴

初めて1967年版を見て、改めて本作をNetflixで視聴

初回の鑑賞時は『日本のいちばん長い日』自体初見であったため、初めて知る事実に驚きの連続だったことを覚えている

玉音放送や終戦の意思決定は鈴木首相の気転にて、天皇の聖断を使い、2つに割れた意見をまとめたとの理解をしていたが、実際は陸海軍の縦割り、陸軍の中での縦割りなど様々複雑な要素を解決しなければいけなかったことがわかった

阿南陸相と鈴木首相と昭和天皇、三人の根本的な信頼関係がなければなしえなかった終戦詔勅の決議だったことが改めてよくわかる

本作は最初から昭和天皇が人間として本木雅弘により、かなり完璧に演じられており、細かい口調や顔つきなども緻密に再現されていたと思う
また侍従たちに慕われる人間としての魅力、自ら責任を取ってでも戦争を終わらそうとする腹のくくり方、ある意味一番偉大な政治家だったのではなかろうかと思った

鈴木貫太郎は山崎努により老獪で狸爺のように演じられているところもあるが、昭和天皇が彼を首相に任命した事が終戦への断乎たる決意の表れであり、それを理解し全うし得る阿南を陸軍大臣に指名した経緯が非常によくわかった

前作と違い、東條英樹が登場し、将校たちに戦争継続の訓示を垂れ、天皇に諌言に行き、見事に一蹴されるところはすごいシーンだった。
東條も非常にうまく演じられていた

また、玉音放送の仕掛け人と呼ばれる内閣書記官長の迫水役の堤真一も非常に良かった❗彼の役柄を見て迫水に興味を持ち、少し調べてみたが戦後も大臣等を歴任する大物政治家として活躍したようだ

1968年版と違い、青年将校達のクーデター事件はコンパクトにまとめられており、狂信的な行動と言うよりは純粋な原理主義により追い込まれていく姿が克明に描かれていた、松坂桃李が良かった
そして彼らは大元帥陛下とは呼ばず、天皇、と呼び捨てにするなど、天皇の意思のもとに軍隊が動いていたわけではないということもよくわかる、リスペクトすら感じられない言動の数々にはガッカリした

前作で加山雄三が演じていた将校たちの放送を拒否するNHK職員に戸田恵梨香が登場していたのがある意味凄いオマージュなのではないかと思った

首相と阿南の別れのシーン、阿南自決のシーンなどはほぼ前作と同じ、一部はセリフもほぼ同じ、ここは原作や前作に対するリスペクトだったと思う

やはり、阿南のラストサムライのイメージは本作でも変わらない

夫人が戦死した息子の人徳について阿南の亡骸に語りかけるシーンは前作にはなく本作のみのシーンだったが、とても良かった😢

楠正成の遺訓も最後は家族を大事にしろということだ、という阿南の言葉をなぞったシーンだった
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