亘

マリーゴールド・ホテル 幸せへの第二章の亘のレビュー・感想・評価

3.4
【ソニーの空回りとシニアたちの恋愛沙汰】
ホテル運営は軌道に乗り拡大を検討し始めた。そんな折ソニーは、新しい客を投資鑑定人と見て過剰接待。さらにホテル買収を巡る対立もあり暴走する。一方シニアたちは新たな恋を始める。

冒頭シニアたちはすっかりインドに適応して生活を楽しんでいて見ていて嬉しかった。そこは好評価だったけど、その後はちょっと期待はずれかなという感じ。

前作は冒頭みんなバラバラだし問題山積みで、新しい平和を作り出すストーリーだった。それぞれのシニアたちのストーリーはバラバラに見えて実は「新しい人生探し」という統一感があったし、最後はソニーたちとの融和・協力もあってある意味冒頭からは想定外の結末だった。でも今作は最初から平和でそこで秩序を崩すものが現れる。とはいってもそれぞれバラバラのストーリーで統一感が薄かったし危機が及んでいない人たちもいて危機が小さかったように思う。特にホテル運営の危機は、ソニーが独りよがりで危機を大きくしたように見えて少しイライラした。

シニアたちは順調に仕事を始めたりしてすっかりインドに適応。次の段階として恋人探しを始める。恋多き女マッジはインド人2人を手玉に取りイブリンは前作からダニエルと仲良し。そしてソニーは順調にホテル運営を行い、投資をお願いしにアメリカまで飛ぶ。そこで鑑定人を送ると言われるのだ。ただその後訪れた新たな訪問客ガイを鑑定人だと決めつけ過剰接待しようとするし、ホテル買収を巡っては意地を張って因縁の相手クシャールと対立。周囲を振り回してしまう。そしてホテル運営に目を向けすぎたせいでソニーは結婚式直前スナイナと喧嘩してしまう。

そんな中で今作存在感があったのはミュリエル。前作は知られざる能力で危機を救う仕事人だったけど、今作は包容力でホテルを守る母親のよう。ソニーが暴走したときには諫め成長を見守る、シニアたちの恋愛争いは一歩引いて見守る。ミュリエルがいなかったらどうなっていたことかと思う。そんなすごい面を見せつつ、アメリカを愚痴ったり(でもお土産はたくさん買う)、紅茶のこだわりを見せたり、前作冒頭と変わらない部分を見せてどこか親近感がわく。

恋愛・ホテル運営・結婚式という問題があるけど、どれも一部の人にしかかかわりがなかったりするし、何よりすんなり鑑定人の正体が明かされてからホテル運営と結婚式の問題は解決してしまう。拍子抜けしてしまったけど、その後の結婚式のダンスシーンではソニーも思いっきり踊っていてそんな問題が去ったことを表しているようだった。それにガイ含めシニアたちもダンスしていたのは楽しそうで印象的。

でも一番意外だったのは、ミュリエルがホテルを去ったこと。去り際も何事もなかったかのようにふるまうのは彼女らしいなとは感じた。でもミュリエルなき後のホテルがどうなるのか気になるから続編とかスピンオフとか作ってもらいたい。

印象に残ったシーン:シニアたちが楽しそうに暮らす冒頭のシーン。ミュリエルがソニーを諫めるシーン。終盤のダンスシーン。

印象に残ったセリフ:「世の中に嫌いなものは数えきれないほどある。医者、日焼け、蚊、長居する客…でも何よりも我慢できないのは──自分で自分を憐れむ人間よ。周囲を破壊する そういう愚か者にならないで」

余談
今作の撮影も前作と同じホテルで行われ、新館の部分も同じホテルで撮影されたそうです。
亘