しおね

ひそひそ星のしおねのレビュー・感想・評価

ひそひそ星(2015年製作の映画)
3.0
東京フィルメックスにて。

時間と距離。
「テレポーテーションが脚光を浴びたのは最初のうちだけ。どこへでも隣の部屋に行くみたいになった時、世界は平坦になった」

科学が発展し、人類よりも人工知能の方が多くなった宇宙を舞台に、神楽坂恵が宇宙各地に何十年もかけて荷物を配達していく話。

配達するものはフィルムや紙コップ、鉛筆などはたから見たらガラクタ。でも当人にとっては大切なもの。
もう二度と届けられないもの、見るだけで涙が出てしまうもの、あの時欲しかったもの。

白黒・セリフが少ない・哲学的な事象、とかなり尖っているがメッセージは普遍的で優しい。
このギャップがぐいぐい観客を惹きつけていく。

繰り返される曜日に、今が何回めの何曜日かどのくらいの月日が経ったのか分からなくなる。消化のような日々でもあり、それが蓄積されていくことが日々であるのだと思った。

Q&Aを聞いていたところ、やはり福島の影響は強かったようで、この映画に映る福島について「もうここに映ってる福島の形じゃなくなっている。私は陽炎を撮った」と言っていた。
ラストシーンも今回新たに付け加えたそうで…ぐっとくる。

絵コンテが相当な量あるというだけあって、目をみはるショットがいくつも。
寺山修司の影響を感じる浜辺のシーンは、人物のシルエットの配置が絶妙だし、画面の真ん中に生える木に太陽の光が薄く伸びているのなんかは凄く絵画的。

ただ構想がかなり前ということで、少し古臭い印象を受けた。
ベルリンで見た映画に影響され、音にこだわったというが、そのこだわりようはまるで『ジャズシンガー』時代、音の喜びに満ち溢れている。逆に言うと音を出したいがために登場させている。
だけど、独特のリズムが出来ていたのは良かった!
木の棒と洗濯機はいただけないけど、空きカンと蛇口から垂れる雫は効果的だったと思う。