MASAYA

アメリカン・ドリーマー 理想の代償のMASAYAのレビュー・感想・評価

3.8
邦題のしかも副題がこれほどセンスのある作品にはなかなか出会えない気がする。

舞台は1981年ニューヨーク。治安の悪いこの地で石油会社を経営するアベルとアナの夫婦。一切手を汚さず全うに急成長したアベルの会社は同業者にとって目の上のたんこぶとなっていた。更なる成長を遂げようとアベルが大口の契約を結ぼうとしていたさなか、何者かによって彼の会社のトラックが次々に襲われ、積み荷のオイルが奪われてしまう。それだけでは終わらず度重なるトラブルが彼を襲う。脱獄の嫌疑に、銀行からの融資の取り消し、さらには家族にまで忍び寄る魔の手。彼は信念を曲げずに会社と家族を守れるのか。

これは率直に観れてよかった。全体的に静かで暗い雰囲気で進み、サスペンスの要素もあって目が話せなかった。「正しい道」以外進まないという強い信念を持ったアベルがとてもかっこよかった。理想への道は険しく、それに伴う代償は計りしれない。それでも暴力に対し暴力で解決しないあたりビジネスマンだなと。対照的なように見えるかもしれないが、『ゴッドファーザー』のマイケル・コルレオーネが父の後を継ぐ決意をしたような雰囲気だった。

それに衣装がさりげなく素敵。特にアナが着ていたアルマーニの白のロングコート。何でもジョルジオ・アルマーニが直々にデザインしたとか。ジェシカ・チャステインとアルマーニは元々親しいみたいですね。

ラストもきれいなハッピーエンドではなくて好き。世の中きれい事だけでは生きていけないのかもしれないと思い知らされる社会派の良質ヒューマンドラマだった。

最初の場面でラジオが8時35分を知らせるのですが、映画の上映開始時間もちょうど20時35分。狙ったのかな?だとしたら粋すぎるヒューマントラスト。

2015.11.12
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