MasaichiYaguchi

パリよ、永遠にのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

パリよ、永遠に(2014年製作の映画)
3.6
原題の“Deplomatie”の訳語は「外交」だが、この作品では「駆け引き」を意味していると思う。
史実に基づいたシリル・ジェリーの戯曲を「ブリキの太鼓」のフォルカー・シュレンドルフが映画化した本作では、ナチス・ドイツ軍占領下のフランスを舞台に、パリ破壊を命じられたドイツ軍将軍と、その作戦を阻止しようとするスウェーデン総領事とのスリリングな駆け引きを描く。
元々芝居だったこの映画は、この熟年男二人による会話劇と言ってよく、舞台でも主演コンビだったアンドレ・デュソリエとニエル・アレストリュプで繰り広げられているので、息もぴったりで終盤まで静かな緊張が途切れない。
東京とパリは姉妹友好都市だが、この作品を観ていて、江戸無血開城を成し遂げた勝海舟と西郷隆盛を思い出した。
国も時代も違うが、彼らが下した英断は多くの無辜の民や美しい都を戦火から守った。
ドイツ軍のコルティッツ将軍はヒトラー総統の命令だからというだけでなく、作戦を敢行しなければならない裏事情がある。
そういう相手の事情も汲み、十重二十重に漏れなく策を巡らして臨む交渉人・ノルドリンク総領事。
戦争という狂気が支配する中、ましてや独裁者アドルフ・ヒトラーが最後の悪あがきをする状況下、未来を見詰め、人類の視点で花の都、芸術の都、世界の憧れの都パリを救った男たちの英知や矜持、そして勇気が静かに心を打ちます。