ニトー

合葬のニトーのレビュー・感想・評価

合葬(2015年製作の映画)
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結構アイロニカルだったりして面白いと思いますよ。自分がアップじゃないときも顔芸を欠かさない柳楽くんとか見所もありますし。「銀魂」とかいう映画ではないのに映画館にかかっていた物体Xがありましたが、あれの柳樂くんはまあ、うん。嫌いではないですが。
さて、この「合葬」は原作漫画ありきの幕末ものなのですが、わたくしは自慢するわけではありませんが日本史・世界史が壊滅的に無知であり、明治維新とか徳川とかそのへんもあんまり、というかまったくわかっていない。もちろん、映画を見ていて大政奉還とかを多少なりとも知っていればそれほど問題はないのですが。

例のごとく原作未読で挑んだわけですが、それはそれで良かったのかもしれないと映画レビューサイトの感想をちらっと読んでいて思った。ただ、原作者が「百日紅」の杉浦日向子ってことでちょと食指が動くのですが。

基本的には三人の若者の話。時代に翻弄された、なんて書くとNHKじみてきてちょっとアレなのですが、決して間違っているわけではないでしょう。してその三人というのが秋津極(柳楽優弥)と福原悌二郎(岡山天音)と吉森柾之助(まさのすけ/瀬戸康史)なのですが、柳樂くんは言わずもがな岡山くんと瀬戸くんもよござんしたよ。ぶっちゃけると瀬戸くんはこういう時代ものだとかなり浮いてしまうんじゃないかと思ったんですけど(ていうか見ていて少し思ってはいたのだけど)、自分のないキョロ充的側面を持つキャラクターということもあって割と合っている。あと岡山くんの、逆顔面センターな顔とかも、学級員とかやっていそうで今回の役どころにも合っている。「パーフェクト・レボリューション」にも出ていましたね、彼。

同じ場所にいながら、それぞれに異なる思想を持った三人の生き様・・・というよりは死に方を描きたかったのだろう。秋津極(柳楽優弥)は陶酔脳筋馬鹿で徳川の名のもとに戦を仕掛けようとし、福原悌二郎(岡山天音)はそんな阿呆な友人を止めるために長崎での勉学の経験を使って穏健派の森篤之進(オダギリジョー)を慕い、吉森柾之助(瀬戸康史)は家から追い出されたからとりあえず彰義隊に入る。

そして、それぞれが当初思っていなかったであろう最期を遂げる。
泰平を望み勉学によって調停を図ろうとした男は友を見捨てることができず真っ先に死に、放蕩三昧で威勢だけは良かった男の刀は友の首と自分しか切れず、苦しむ友すら切れなかったなまくらを抱えて生き延びた男。

観客である我々は彼らの生き様・死に様を安全圏から半笑いで眺めればいいのです。なぜなら、映画を見終わった我々は目の前にある戦争に目を向けなければならないのですから。
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