えんさん

スター・トレック BEYONDのえんさんのレビュー・感想・評価

スター・トレック BEYOND(2016年製作の映画)
3.5
IMAX3D字幕版で鑑賞後、通常字幕版でも。

果てしない宇宙への旅を続けていたエンタープライズ号。どこまでも続く宇宙の拡がりと同じように、指揮官カークは終わりなき旅の毎日に日々の目的を失っていた。同じ頃、盟友スポックも尊敬する師の死により、自らの役割を問い直していた。それぞれが悩みをもつなか、寄港した宇宙港ヨークタウンにて、謎の宇宙船から救出の依頼を受ける。不時着した宇宙船の救出に向かったエンタープライズ号だが、何者かの攻撃を受けて撃破されてしまう。カークは仲間と別れ、たった1人で未知の惑星に放り出されてしまうのだが。。人気テレビシリーズの新映画シリーズ第3弾は、「ワイルド・スピード」シリーズのジャスティン・リンがメガホンを取っています。

ディズニーのテコ入れで新たなレジェンドを刻み始めた”スター・ウォーズ”シリーズですが、同じ宇宙モノSFの双璧となる”スター・トレック”シリーズのほうが、テレビドラマとしても、数々作られている映画版にしても歴史が深い。そんな中、2009年からJ.J.エイブラハムの手によって作られた船長カークの誕生から、若手船長として成長していく本シリーズも第3弾。それ以前の映画版に比べ、格段にCGのクオリティも上がり、アクションとしても、ドラマとしても動きや厚みが従来とは圧倒的に違った2009年の1作目「スター・トレック」には興奮しましたが、3作目に来るといい意味でも悪い意味でも落ち着いてきたかなという感があります。1作目ではテレビシリーズファンにも嬉しいエピソードがたくさん盛り込んでいて、そのつながりを発見していくのが楽しかったのですが、本作はいかんせん中身が薄い。これも本作が、過去2作のエイブラムスのメガホンと違って、ジャスティン・リンが取っているからなのでしょうか。。

本作、アクションとしての面白みは、とにかくたくさんあるんです。終盤の惑星から脱出劇にバイクを使ったアクション演出も、宇宙港での大団円も、さすが「ワイルドスピード」の監督さんらしい宇宙船(乗り物)アクションの力の入れようというものを感じるのです。ですが、お話のボリュームとしては、正直テレビシリーズの一本分くらいかなという感じ。「スター・トレック」らしい、何かそれぞれの立場の正義に悩むとか、思想の違いに苦しむとか、ドラマとしての厚みがないのです。冒頭のカークやスポックの悩みの部分も、中盤からアクションアクションの連続で、それぞれのキャラクターが物語の中で真剣に向き合っている感がないので、ラストのとってつけたような前向き感も白けてしまう。。 展開はうまく考えられているし、キャラクターの個性は出ていると思うのですが、何か成長している感はないのです。

1作目は船長カークの誕生、2作目は圧倒的なパワーを持つ強敵への対峙で、多くの仲間の死の描写でも、エンタープライズ号のメンバーの成長を感じる進め方をしていた。本作でも、特にエンタープライズ号の撃墜など、多くのクルーが犠牲になっているのですが、主役級は何か普通にアクション映画をしているだけなので、宇宙ドラマとしての”スター・トレック”がもつ良さがあまり出ていないように思います、、、と書いておきながらですが、やはりエンタープライズの勇姿や、美しいオープニング&クレジットの映像&音楽を感じるだけでも、ファンは興奮してしまうのも事実。それだけで、ファンとしては★1つ分追加してしまうくらいです。エイブラハムが、”スター・ウォーズ”の総監修のほうに手を付けてしまったため、本シリーズが続くかは不透明ですが、違う製作陣に変わっても、映画版としての「スター・トレック」が今後も続いて欲しいと切に思うところです。