てるる

あんのてるるのレビュー・感想・評価

あん(2015年製作の映画)
4.3
桜と、どら焼きと。

ここ最近、パワハラ疑惑とか、オリンピック番組や映画であまりいいニュースを聞かない河瀬直美監督。

でもこの映画は文句なしに素晴らしい。
作品の質もさることながら、邦画界のレジェンド樹木希林の演技が染みる。

ある事件の贖罪で生き続ける男。
ある病気で隔離されてきた女性。
家庭環境に悩む少女。

それぞれ不自由な生活だった3人がめぐり逢い、生きる意味を見つけていく。
これがまた押し付けがましくなく、あくまで自然に心に語りかけてくる。

徳江さんの「楽しかった」は本心でもあり、店長さんを慰めるための言葉。
僅かでも、陽の光を浴びて生きていられた時間だったんだろうな。

この映画のいいところは、確かに客足が遠のくんだけど、その元凶となる明確な悪役がいないこと。

嫌な奴はいるけど、あくまで現実の延長線上。
なんなら自分もこの店に通わなくなる客の1人になり得そうで、自分の中の偏見にも気付かせてくれる。

そしてだからこそ作品の哀しさと、優しさは最後までブレなかった。

そういえばブラックジャックでもハンセン病の回があって、あにらはある意味で壮絶な復讐回だった記憶。
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