桜と、どら焼きと。
ここ最近、パワハラ疑惑とか、オリンピック番組や映画であまりいいニュースを聞かない河瀬直美監督。
でもこの映画は文句なしに素晴らしい。
作品の質もさることながら、邦画界のレジェンド樹木希林の演技が染みる。
ある事件の贖罪で生き続ける男。
ある病気で隔離されてきた女性。
家庭環境に悩む少女。
それぞれ不自由な生活だった3人がめぐり逢い、生きる意味を見つけていく。
これがまた押し付けがましくなく、あくまで自然に心に語りかけてくる。
徳江さんの「楽しかった」は本心でもあり、店長さんを慰めるための言葉。
僅かでも、陽の光を浴びて生きていられた時間だったんだろうな。
この映画のいいところは、確かに客足が遠のくんだけど、その元凶となる明確な悪役がいないこと。
嫌な奴はいるけど、あくまで現実の延長線上。
なんなら自分もこの店に通わなくなる客の1人になり得そうで、自分の中の偏見にも気付かせてくれる。
そしてだからこそ作品の哀しさと、優しさは最後までブレなかった。
そういえばブラックジャックでもハンセン病の回があって、あにらはある意味で壮絶な復讐回だった記憶。