ヒゲゴリ恐怖映画系

あんのヒゲゴリ恐怖映画系のレビュー・感想・評価

あん(2015年製作の映画)
4.4
"あん"が繋いだ縁…

アラームで目を覚ましモソモソと動き出す男…アパートの階段を降り階下の店を開ける、店の名前は「どら春」。
皮を焼き、あんを詰め、いつもと変わらぬ日常に突然訪ねて来た1人の老女。
提示している時給よりも安くて構わないから雇って欲しいと告げられる。
関わりたく無い男は「すいません」と断るが、老女の持って来た"あん"をひと口食べてその考えは変わる。
店に雇い"あん"の教えを乞うと、たちまち評判の店に…が、老女には男に告げていない素性があった…

影がある男が老女や慕ってくれる女の子に心癒される、そんな話だと思ったら大間違いで、自分が思い描いていた内容とは全然違う映画だった。
桜の咲く季節に出逢い、短いながらも心通わせた男と老女。
打ち解け、親しみを覚えた時に店のオーナーから老女の素性の話。
食らいつくも世間の風は冷たく、店の為に老女を解雇…ただどうしようも無いやるせなさが痛い。
ある特定の病気に対しての世の対応が劣悪であると同時に、その病気本人達の心の強さがなんとも切ない。
老女を訪ねて話を聞き、涙を流す場面は胸が締め付けられ涙が溢れた。
見た目や風潮で本質を見誤った時代の隙間に、ほんの少し優しさが心に大きく刺さった作品でした。