スクリーンいっぱいに広がる、樹木希林さんの穏やかな語り口と、優しい表情。
実は…彼女をスクリーンで観るのは初めてでしたが…。彼女が、日本映画界にとってどんなにかけがえのない存在だったかと、心から思いました。
地元映画館で、樹木さんの追悼上映ということで、この作品を上映してくれました。
友人のすすめで昨年DVDで鑑賞してますが…永瀬正敏が大好きな私、彼目当てでの鑑賞でした。まったりと進むストーリーの中に、ハンセン病に対する差別へのメッセージが含まれた良作だと感じました。
スクリーンで観る映画はやはり格別です。今回はずっと希林さんに見入っていました。
スクリーンに映る、あんを作っている時の希林さん、火にかけた木のふたに耳を押し当てたり、水道から細い水を流しながら小豆を見つめたり…まるで小豆と話をしているようでした。
のちに彼女が言います。
「私はいつも小豆の言葉に
耳を澄ませているの。
どんな風に吹かれて
小豆がここにやってきたのか
旅の話を聞いてあげること。」
「この世にあるものは全て
言葉を持っていると
私は信じています。」
「私たちは
この世を見るために
聞くために
生まれてきた。
だとすれば
何かになれなくても
私たちには
生きる意味があるのよ。」
病気のために隔離された生活を長年してきた彼女だからこそ、自然と向き合い、自然の言葉に耳を傾けて生きてきたのでしょうか…
だから、どら焼きを焼いている彼の空っぽな眼差しにも気づいたのかしら…
どら焼きの店に出入りする中学生のワカナを希林さんの孫娘が演じていますが…彼女の静かなものごしや話しかたも、この作品の中で、とても自然に感じました。