ぴのした

バケモノの子のぴのしたのレビュー・感想・評価

バケモノの子(2015年製作の映画)
3.9
素直に面白い。バケモノ界で過ごして成長してすぐ現実に戻るみたいな話かと思ってたので、中盤からは意外な展開だった。

詰め込みすぎな気もしたけど、終わってみればかなり面白かった。ただ全体的に展開が早くて、もっと各シーンをじっくり見たかったな。バケモノ界の描写とか、ほかの宗主に会いに旅をするところとか。

声優陣がこんな豪華俳優で固められてるのをエンドロールで知ってびっくり。全然違和感がなくてすごい。たしかに言われてみれば熊徹もサルも坊主も声優にキャラデザを寄せているような気がしないでもない。個人的に好きなのは次郎丸。

メルヴィルの白鯨は読んだことがあったので嬉しかった。一つうんちくを語らせてもらうと、原作は多人種の寄せ集めの船vs白人の象徴としての白鯨、という意図があるらしい。

バケモノと人間が力を合わせて戦う相手として白鯨を選んだのにはそういう意図もあるのかもしれない。

ちなみに最終決戦の背景は代々木競技場第一体育館。丹下健三設計の吊り天井式のユニークな構造で、「船」がモチーフになっている。メルヴィルの原作に倣い、船vs白鯨の戦いを再現しているのがうまい。

さらにうんちくを語らせてもらえれば、渋谷のスクランブル交差点のシーンなどで登場するスターバックスコーヒーは、白鯨の登場人物の航海士スターバックから命名されている。交差点に鯨の影が来た時に店を一周映して「starback」の文字を見せたのは粋な演出だ。